登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日 |
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公立図書館において、ボランティア活動への支援は様々な方法で行われており、 a)経済的支援の実施 b)研修の実施 c)担当者やコーディネーターの配置 d)ボランティア組織の設置 e)ボランティア活動への評価や成果の活用 などが代表的なものである。 まず、a)経済的支援の実施については、謝金を出している例が少なからず見られる。この他に、事故が起きた時に備えてボランティア保険をかけている例や、専用の部屋や印刷機などを用意しボランティアが活動しやすい環境を整えている例、施設利用の優遇措置をとっている例などが見られる。経済的支援については予算の制限などで拡充が困難な場合も多いが、工夫次第で円滑に活動を行えるような環境を整備することは可能である。 次に、b)研修の実施も、ボランティア活動の質を向上させるために重要である。ボランティアへの研修は、受け入れ時や年に1、2回程度行われることが多く、その内容もボランティア活動についての知識や技術が中心となっており、初任者研修や定期研修としての意味合いが強い。活動の質を向上させるためには、研修の実施率の向上だけではなく内容についての検討が求められる。 さらに、c)担当者やコーディネーターの配置は、ボランティアの意見を集約し施設に伝えたり、施設とボランティアとの連絡調整を円滑に行ったりするために重要であるが、実際にはあまり進展していない。また、d)ボランティア組織の設置は、ボランティアの人数が多い施設でボランティアの取りまとめを行ったり、ボランティアが自律的な活動を展開したりするために重要であるが、まだ少数の施設での設置に留まっている。施設とボランティアとの間の連絡調整は、活動支援にまつわる大きな課題の1つである。 e)ボランティア活動への評価や成果の活用の例としては、活動の内容を施設の広報誌で紹介したり、優秀な活動を表彰したり、活動が行える他の機会を提供したりすることなどが挙げられる。適切な評価と成果を活用する機会の提供は、ボランティア活動への支援という点に留まらず、活動の広がりを生み出すという点でも非常に重要であるが、実際に評価や成果活用を行っている施設はまだ少ない。 総体として見ると、公立図書館におけるボランティア活動への支援は、まだ十分ではなく、他の社会教育施設に比べても支援の割合は低く留まっている。ボランティア活動の活性化のためには、活動への支援がさらに充実されることが望まれる。 ここで、公立図書館でのボランティア活動への支援は、自治体の財政規模や、職員体制、さらに設置主体ごとに求められる役割の違いといった施設外の要因だけではなく、ボランティアの受け入れ人数や、受け入れてからの年数、そして施設での職員とボランティアとの関係など、施設内の要因によっても大きく影響を受けることに注意が必要である。つまり、ボランティア活動への支援においては、施設の置かれた状況の違いを考慮しながら、それぞれの施設で活動への支援に関する課題を特定し,対応策を検討していくことが重要になるのである。 br> |
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参考文献 ・荻野亮吾「公立図書館におけるボランティア活動支援の現状−図書館ボランティア調査結果の計量分析−」『日本生涯教育学会年報』第29号、2008年 ・社会教育計画研究会編『社会教育施設におけるボランティア活動の現状−調査報告2006−』2008年 ・吉田昭「図書館ボランティアに関する実態と意識−茨城県内公立図書館の調査から−(第1回〜第3回)」『社会教育』No.725・728・729、2006年・2007年 |
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