生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

公民館 (こうみんかん)

‘Kominkan’/citizen's public hall
キーワード : 文部次官通帳「公民館の設置について」、公民館の設置及び運営に関する基準、教育機関、公民館設置運営要綱、社会教育法
坂本登(さかもとのぼる)
3.公民館の課題
  
 
 
 
   公民館は、他の社会教育機関に比べ、数の上で圧倒的多数を誇っている。しかし、このことが公民館のアキレス腱ともなって、公民館は長い間、非常勤と兼務の職員に依存的な職員配置、目的的施設・設備・教材等の未整備、貸し館中心の施設運営など、教育機関としての機能が十全でないと指摘されてきた。公民館を複数設置する市町村が多く、その設置形態は、本館単独、複数の本館、一つの本館に複数の分館、複数の本館に複数の分館など、市町村によってまちまちである。このため、公民館設置市町村が、すべての公民館に人=職員、もの=施設・設備、こと=事業のすべてを具備しようとすると、財政的ハードルが高くなる。ここに、公民館誕生後半世紀が過ぎもなお、教育機関としての機能整備が先送りされてきた理由がある。この事実を真摯に受け止めるならば、公民館は、教育機関として再生する施設とコミュニティ施設として存在させる施設とに峻別すべき時期にある、と思われる。
 さらに、最近、民間カルチャーセンター等の伸張、生涯学習センターや文化情報センター等に改称する公民館の増加、公民館の設置・運営基準の改正、施設整備費補助の廃止などもあって、公民館のあり様が改めて問われている。小さな政府への移行との関連でいえば、公民館は、官設官営から民間(民法第34条法人)への移行の可能性の検討が迫られている。官設・官営を継続する場合には、市町村合併によるサービス対象の「一定区域」の変更が余儀なくされる。しかし、合併が住民サービスの向上にあるとしても、いくつかのケースの中には低下の可能性も無きにしも非ずという現実もある。公民館のサービス機能をより充実させるためには、合併前後のサービスを対比・評価できる仕組みと方策を講じておく必要があり、義務設置から任意設置となったとはいえ地域のニーズを反映する役割をもつ公民館運営審議会の活用と自己点検評価が不可欠である。
 さらに加速的に進む少子高齢化への対応も迫られている。合計特殊出生率の減少、平均世帯人員の小規模化、進学率の上昇による同年齢集団での生活の長期化など、子どもたちの人間関係はどんどん狭小化している。子どもと他世代との交流機会の拡充を可能にする機関は、地域に根を張り住民にもっとも身近な施設である公民館をおいてほかにない。しかし、全国公民館連合会の「公民館の運営に関する調査報告書」(平成8(1996)年)によれば、小中高校生の施設利用申込みに対する制限や条件があまりにも多い。今後、子どもたちの公民館利用に対し、申し込みや利用条件を緩和するなど柔軟な対応が求められる。
 ところで、現在、世界の先進16カ国が「宇宙ステーション・ミール号」の建設に取り組んでおり、完成後の平成22(2010)年以降には、宇宙ステーションでの滞在・生活者が出現することとなる。それが国民の間に普及するまでには時間を要するであろうが、そう遠くない時期に、宇宙での生活が一般化し、宇宙に新たなコミュニティが形成されることが夢想ではなくなった。そこに公民館は存在するのであろうか否か。もし、公民館が必要でないとするならば、これからの時代は公民館終息の道でしかない。公民館関係者には、宇宙コミュニティでも求められる公民像を打ち立てる責務が課せられている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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