登録/更新年月日:2006(平成18)年10月31日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
人間の学習行動を理論的にとらえ説明しようとする試みは古くからなされてきた。とりわけ、心理学の分野では、実験などを通して人間の学習行動をとらえる研究が19世紀後半以降数多く登場することになる。しかしそれらは動物や子どもの学習を対象としたものであり、成人の学習を十分に説明するものではなかった。 したがって、ノールズのように、動物や子どもの学習をもとにしてではなく、成人の特性にもとづいて成人の学習を理解することが主張されるようになるのであり、特にアメリカでは、成人の学習理論研究が20世紀半ばから発展を遂げるようになる。さらには高齢者独自の学習ニーズや、職業能力の向上などの目的でなく、自分の希望や好みにしたがって自発的に取り組み、学ぶこと自体に価値を見いだす傾向に注目したマクラスキーのように、高齢者の学習を理論化する研究もみられるようになっていく。こうして、学習理論研究は、子どもから成人、高齢者へとその対象を広げていくのであるが、それは、成人の学習においては子どもの学習との差異や相違点、高齢者の学習においては子どもや成人の学習との差異や相違点が強調され、その独自性が主張されていくプロセスとしてとらえることもできよう。 他方、成人の学習理論研究においても、対象の多様性ゆえにその学習のとらえ方の相違が生じる。ノールズのアンドラゴジー論においては、自己決定性が成人の学習を特徴づける要素と仮定され、また、メジローやブルックフィールドのようにパースペクティブの変容に成人の学習の本質を見いだそうとする研究もみられるようになる。そしてさらにはクロスやメリアムのように、既存の研究に共通してみられる要素に着目し、それらを統合して成人の学習を説明する試みが登場していくことになる。こうした成人の学習理論研究の展開においては、まず研究対象として成人の学習が設定され、多様な学習論が提示され、そのうえで統合の試みが現れるというひとつの流れを見いだすことができるのである。しかし、それは成人の学習という区切られた対象領域の内部においてであって、学習理論研究についていえば、依然として子どもの学習、成人の学習あるいは高齢者の学習と区切られた形で研究がすすめられている面があることは否定できないであろう。 ところで、日本におけるこの領域の研究は、とりわけ成人の学習理論についていえば、アメリカからは遅れ、1970年代以降に研究がすすめられるようになっていく。そうした研究には、NHK放送文化研究所の報告書『日本人の学習−成人の学習ニーズを探る−』のように実証的な調査にもとづくものもあれば、アメリカなどの研究を取り入れたものもあるが、研究の蓄積という観点からいえば、十分なものではなく、さらなる研究の蓄積、進展が待たれる状況にある。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・Knowles, M. S., The Modern Practice of Adult Education: From Pedagogy to Andragogy.(2nd. ed.)New York, Association Press, 1980. ・NHK放送文化研究所〔編〕『日本人の学習−成人の学習ニーズを探る−』第一法規, 1990. |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |