生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

著作権と生涯学習 (ちょさくけんとしょうがいがくしゅう)

copyright and lifelong learning
キーワード : 知的財産戦略、デジタルコンテンツ、著作権法の改正、教育団体の組織化、自由利用マーク
坂井知志(さかいともじ)
1.知的財産戦略としての著作権
  
 
 
 
  【説明】
 知的財産権の関係法規には、知的財産基本法、産業財産権法(特許法・実用新案法・意匠法・商標法)植物新品保護法、半導体チップ保護法とともに、著作権法がある。近年、著作権は日本の知的財産戦略の一部としての見直しが図られている。
 1990年代末から政府や中央省庁などの方針には、これからの情報通信社会における日本の戦略的なコンテンツ政策が盛り込まれた。特に、2000年(平成12年)9月21日に当時の森総理大臣が所信表明演説で表明したITに関する方針は、その後「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」で検討され、全ての国民が情報通信技術を活用できる日本型IT社会を実現するための構想、e-Japan戦略として日本の情報通信社会の基本となった。当初は、5年以内に世界最先端のIT国家を築くために高速で安価な通信網を築くことや米国を上回るIT技術者の確保ができるように人材養成を図ることなど基盤的な内容が盛り込まれていた。その後、議論が積み重ねられ、重点項目を示すなど具体性を持つ内容となっていった。2003年(平成15年)7月2日のe-Japan戦略Uにおいては「知」の分野の方向が示された。社会人が継続的に専門的な知識を学ぶための遠隔教育の環境を整備することや美術館・博物館などのコンテンツをアーカイブ化し、いつでもどこでも学習することが可能な従来からの生涯学習課題を情報通信社会により実現できることを内容の柱に据えていることは特に注目される。
 「実現したいこと」としてITの利用により、個の学習スタイルを多様化し、個の能力を向上させること。国際的な労働市場における我が国の人材競争力向上を図ること。コンテンツについて総合的な取り組みを推進し、我が国の知的財産を利用した新たな価値を創造することで、コンテンツ産業等の国際競争力の向上を図るとともに、海外における日本文化への理解を向上させることなどを挙げていることは、生涯学習と密接な関係を持つものと考えられる。
 さらに、「実現のための方策」として「知的財産の権利が適正に保護されたデジタルコンテンツが円滑に流通し、コンテンツを公正かつ容易に利用できる環境を整備する。放送・出版等のコンテンツや、美術館・博物館や図書館等の所蔵品、Web情報、特色のある文化等のデジタル化・アーカイブ化、および国内外への発信を推進する。」ことを掲げている。そのことを実施するための課題と対応として「デジタルコンテンツ時代に対応した著作権契約システムを整備するため、制度的・技術的枠組みの整備、国際連携や技術開発等を行う。」ことを指摘している。このことからもわかるように日本の国家戦略としての「知」の方法には遠隔教育や情報インフラなどの技術的な問題だけでなく、制度的な検討が大きな課題となっている。その一つの課題に著作権が挙げられている。
 生涯学習政策においても情報通信社会の実現は重要な課題であり、それとともに著作権の問題は生涯学習における制度的課題となっている。知的財産が国家的に重要なものとなりつつある今、国際ルールとしての著作権を戦略的に捉える視点が、生涯学習にも求められている。
 
 
 
  参考文献
・「知的財産権六法2005平成17年版」 三省堂
・著作権情報センターとメディア教育開発センターのHP
 
 
 
 
  



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