登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【意義】 一般的にカリキュラムというと、学校教育における教育課程をイメージする場合がほとんどであると思われる。ここでは、カリキュラムとは、学習者が生まれてから成長する過程において経験する学習内容全般として捉えていく。そこで、学校教育におけるカリキュラム開発を考えていくと、既存のカリキュラムから新しい内容を生み出すのではなく、既存の計画や内容を別の視点から捉え直そうとするものである。その視点となるのが、地域教育経営であり、学校教育外での活動や教育・学習場面を結びつけていくものである。つまり、時間や空間を意識しながら学習者の学習経験を結びつけ、関係性を見出していく視点が地域教育経営という発想である。カリキュラム開発に際しては、教師がこの視点をどう生かすかが課題といえる。 具体例としては、教師は教育実践において、類似した実践や連続する新たな教育・学習内容のつながり・関係性を意図して授業を構築しながら、年次的に積み重ねていく。ここで言う「つながり・関係性」とは、学習者の時間的(年齢的な成長)・空間的(学校・家庭・地域)な広がりのことである。教育・学習の内容は、学校教育の教育課程で学ぶものや社会教育で学ぶノンフォーマル的なもの等多種多様である。教育・学習内容を提供する者が意識してそれらにつながり・関係性をもたせていくことが、カリキュラム開発につながっていくのである。 【実践の方向性】 ここでは、具体的な学習場面を想定して、地域教育経営の視点からカリキュラム開発のあり方を考えてみたい。「総合的な学習の時間」において、全児童でウミガメの保護・飼育活動に取り組んでいるカリキュラム開発の事例がある。沖縄県名護市立嘉陽小学校である。同校では、地域の特性として、ウミガメが近くの浜に産卵に来ることから、沖縄県知事の許可を得てウミガメの卵を保護し、学校のカリキュラムに位置づけて、年間を通して飼育・観察・テーマ追究のサイクルで、学習活動を行っている。同校の「総合的な学習の時間」は、家庭や地域での生活体験や生き物を育てるという、児童の体験活動が基礎となっており、その経験を生かして飼育活動へと移行する。また、児童は、1年生から年次的に研究を積み重ね、6年生までの時間的なつながりの中で学習を展開している。さらに、児童は、教科の枠組みを超えて学習を展開していく。具体例としては、理科の学習を生かして、生命誕生のメカニズムを学び、児童各自のテーマ追究にあたっては、算数で学んだ統計的な知識や、国語での文章力を生かしてまとめていく活動等である。 このように、同校では、総合的な学習の時間を中心として、家庭における体験や6ヵ年を見通した学習の流れと教科・領域での学習がスパイラルに絡み合い、総合的・統合的につなぎ合わせて学習活動を実践しているのである。加えて、この活動には地域住民の協力があり、情報提供や学習成果の発表への参加等、学校と地域のつながりも強い。また、活動の展開にあたっては、水族館の専門家からもアドバイスを受けており、ノンフォーマルやインフォーマルな学習等の空間的なひろがりも生まれている。同校の取り組みは、地域教育経営の視点に立脚したカリキュラム開発の好例として評価することができるとともに、多くの示唆を与える取り組みとなっている。 br> |
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参考文献 |
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