生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月25日
 
 

専修学校改革の動向と課題 (せんしゅうがっこうかいかくのどうこうとかだい)

キーワード : 大学入学資格、編入学、専門士、評価システム
今野雅裕(こんのまさひろ)
3.専修学校の今後の課題
  
 
 
 
  ア.学生確保
 18歳人口の急減状況の中で、学生確保が大きな課題となってきている。新規高卒者の専修学校への進学率は、毎年拡大し続けてきているが、高卒者数そのものの減少によって、学生の確保は各専門学校での最大の課題の一つになっている。大学などが「専門学校化」している状況の中で、他の学校にない特色ある優れた教育を実現していけるかどうかが問題になる。専門学校は、今後とも、産業構造の変化等に機敏に対応して、実践的で専門的な職業教育の高度にかつ多様に実現していくことが必要になっている。また、最近では、資格取得を目指して、専門学校に再入学する社会人や大学等既卒者も増えており、平成16(2004)年度では、入学者全体の約8%にもなるという。今後は、高校の新規卒業者だけでなく、こうした人たちの受け入れを意識的に行うことが重要になる。
イ.教育の資の一層の向上
 専修学校においては、その教育が、産業社会の人材ニーズや個人の学習ニーズに的確・柔軟に対応していくことができるように、専修学校設置基準等は極めて大綱的に作られている。そのため、専修学校では、多様で自由な教育運営が行われてきたが、それだけに、他の学校に比べても、教育活動に対してのきちんとした評価とその公表が必要と考えられている。大学・短大では既に、自己点検・評価の実施ばかりでなく、外部の専門家による外部評価、あるいは第三者機関による認証評価システムが確立されている。初等中等教育段階でも、学校評議員制度、学校評価制度が導入されつつある。
 ところが、専修学校では、専修学校設置基準で自己点検・評価についての努力規定が設けられるばかりである。自ら多様な学校情報を積極的に公開するばかりでなく、外部評価を含め多様な評価を実施して、教育の実践や学校の運営を改善していくとともに、社会からの信頼感を一層大きくするよう努力する必要がある。
ウ.大学名称、1条学校化、経常費助成の要望
 専門学校関係者からは、専門学校のうち一定の要件を満たすものについては、例えば、専科大学とか専門大学とかの「大学名称」を名乗ることを認めてほしいとの要望が寄せられたことがあった。かつて、大学審議会で検討されたが結論は出ていない。最近では、専修学校の団体から、学校教育法の第1条に規定する学校と位置づけてほしいとの要望が出されている。また、大学・短大と同様に経常費助成の対象にしてほしいとの要望もある。これらはいずれも、専門学校が実質的に高等教育の一環を担い、社会的に大きな貢献をしていることから、学校教育法の正規の学校と位置づけて、振興を図るべきとの考え方による。しかし、これには、常に、専修学校が正規の学校とは異なったミッションで制度化されていることをどう捉えるのかの基本問題がある。専修学校制度の意義という本質論に関わることであり、慎重な考察が必要である。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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