生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2013(平成25)年8月29日
 
 

生涯学習推進計画作成ガイドライン−数値目標の設定− (しょうがいがくしゅうすいしんけいかくさくせいがいどらいん−すうちもくひょうのせってい−)

キーワード : 生涯学習推進計画、数値目標、地域指標、相関、回帰分析
浅井経子(あさいきょうこ)
2.数値目標と地域指標の関係を探る−事例から−
 
 
 
 
  【手順】
 数値目標とする「講座等受講者率」をxとし、地域指標のボランティア活動率、刑法犯認知率、中高年者就職率をyとして、xをどれだけアップすればyがどの程度よくなるかと考え、
 y=f(x)+a                
の関係式をつくる。
【数値目標xと地域指標yの関係】
 実際にxとyとの間に関係があるのかどうかを調べる必要がある。 学習内容別の講座等受講者率xと3つの地域指標yとの関係を相関係数で示したものが表2である。職業関係の講座を除けば講座受講者率がアップするとボランティア活動率もアップし、体育関係の講座以外では講座受講者率がアップすると刑法犯認知率は低下する傾向がみられる。中高年者就職率の場合は教養関係や市民意識関係の講座、講座等受講者率全体等で比較的強い相関がみられる。
 これらの結果から講座等受講者率xと3つの地域指標yとの間には何らかの関係があることがわかる。しかし、相関係数では因果関係を特定することはできない。また別の要因による、見かけの相関(疑似相関)であるかもしれない。
 どちらが原因あるいは結果であるかについていえば、ボランティア活動の活発化(または停滞)や犯罪の減少(または増加)が講座等受講者率に影響を与えると考えるのは不自然であり、講座等受講者率の増加(または減少)がボランティア活動率や犯罪認知率に影響を与えると考えた方が自然である。見かけの相関については、様々な考え方が成り立つとは思うが、今回の場合は多分に高齢化が影響を与えているのではないかと推測できる。高齢化している地域では財政難の進行によりボランティア活動は不可欠であろうし、犯罪は少ないと予想できる。講座等受講者率及び地域指標と高齢化率との相関係数をみると、表3に示したようにそれぞれで比較的強い相関がみられる。
 そこで高齢化の要因を取り除くため、高齢化率が同じ県を取り出して講座等受講者率がアップすると地域指標がどのように変化するかを関係をみることにした。表4は、高齢化率が同じ県ごとに講座等受講者率が低い順に並べて地域指標の違いを示したものである。講座等受講者率がアップするとボランティア活動率や中高年者就職率がアップしたり、刑法犯認知率が低下したりするところには数値を斜体で示しアンダーラインを引いた。反対の傾向がみられるところはゴチで表示した。表4の地域指標の数値をみると、一部にゴチがあるものの、多くは斜体でアンダーラインが引いてある。したがって、高齢化による影響を除いたとしても、傾向としては講座等受講者率がアップするとボランティア活動率や中高年者就職率はアップし、刑法犯認知率は低下するといえるように思われる。
 この点をさらに補強するため、観点を変えて、内閣府の「生涯学習に関する世論調査」のデータを使い、学習方法別の学習率とこれらの地域指標との関係をみてみよう。
 今回数値目標に設定しようとしている講座等受講者率は、前述したように公的機関・施設を中心とする講座等の受講者率である。表5をみると、「自治体の講座や教室」の場合は、ボランティア活動率のアップや刑法犯認知率の抑制に関係があることがわかる。また、「同好者の集まり、サークル活動」の場合は、有意差は明確に出てはいないが、刑法犯認知率の抑制や中高年就職率アップに関係がありそうな結果となっている。一方、参考に示した「民間の講座、教室、通信教育」や「自宅での学習活動」では、それらの地域指標との関係ははっきりみられない。
 複雑な社会現象にあっては因果関係の特定は難しいため、多面的に検証を積み重ねていく必要があるが、これらのことから講座等受講者率xと3つの地域指標yとの間には先の式が成り立つと仮定することができるように思われる。 添付資料:表2、表3、表4、表5
 
 
 
  参考文献
・浅井経子「生涯学習推進の効果に関する分析−ボランティア活動率、投票率、犯罪率への社会教育費の効果−」日本生涯教育学会論集28、平成19年7月。
・浅井経子「地域指標との関連からみた生涯学習支援と生涯学習の構造−生涯学習推進の効果分析を通して−」日本生涯教育学会論集29、平成20年9月。
・浅井経子「生涯学習推進の効果・その1、その2、その3」『生涯学習研究e事典』平成21年8月、平成24年3月。
 
 
 
 
 



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