登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【高齢者の自立への関心の高まり】 近年、高齢者の自立への関心が高まっている。その背景の一つに高齢化の進行がある。1994年にわが国の65歳以上の人口の総人口に占める割合は14%を超え、国連でいう「高齢社会(Aged Society)」に突入し、さらに2015年(平成27年)には総人口に占める65歳以上の人口の割合が26.0%に達し、実に4人に1人は高齢者になることが予測されている。 こうした高齢人口の増加に加えて、核家族化や女性の就労化の進行等による家族の福祉力の低下や地域の相互扶助力の低下は、社会福祉サービスを必要とする人々の増加やサービスに対するニーズの多様化を招くこととなった。一方、人生50年時代から80年時代へというライフサイクルの変化は、高齢者の生き方にも影響を与え、長期化した高齢期をいかに「生き甲斐」をもって過ごすのかが彼らの大きな関心事になってきたことも、近年、高齢者の自立に対する関心が高まってきた原因であるといえる。 【高齢者の自立】 従来の自立の概念は、もっぱら「働いて経済的に自活すること」を意味し、自立援助は生活が困難な者に対する経済的援助がその主たる内容であった。それに対して1960年代後半からアメリカを中心として展開された身体障害のある人の「自立生活運動」は、生活における自己決定、自己選択を通じて自らの生活の質を高めようとする行為を自立と捉えようとした。 高齢者の自立もこうした観点から捉えられなくてはならない。もし、身体的な自立や経済的な自立のみを強調し、他者に頼らず何でも一人で行えることを高齢者の自立とするならば、高齢者が自立を追求し続けることは難しくなる。なぜならば、年を取ることは、必然的に身体的な衰えを伴うものだからである。しかし、そうした衰えを受容した上で、自らやれることは自らが行うが、援助を得ることが最適な解決策であると判断した場合には、積極的に他者の援助を得ることで身体的な衰えに適応しつつ、自己の実現と成長を追求することも自立の重要な側面として捉えるならば、自立は高齢者にとって必要不可欠な課題となるであろう。とりわけ他の年齢層と比較して身体的自立や経済的自立が困難になってくる高齢期においては、この精神的な自立の占める比重は非常に大きくなる。 【精神的自立の中核としての自己決定】 この精神的自立の中核にあるのは、自立生活運動の中でも強調されている「自己決定」である。作田啓一は、主体性の意味を考察する中で、自己決定を「外界の諸要請と内発的な諸欲求をくまなく点検し、将来を考慮しながら、諸欲求を総合的な見地に立って最適度に満足させるよう、行為を決定すること」と定義した。高齢期を自立的に生きていくためには、高齢者が自己決定を通じて、自己や社会の状況に主体的に関わっていかなくてはならない。自己決定は、高齢者が主体的な生き方を創造し、そして自己を実現していくためには不可欠なのである。 br> |
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参考文献 ・小沼正編『社会福祉の課題と展望』川島書店、1982年 ・岡田武世編著『人間発達と障害者福祉−障害者福祉論の新しい展開−』川島書店、1986年 ・南澤貞美編『自律のための教育』昭和堂、1991年 ・古田光、作田啓一、生松敬三編『近代日本社会思想史II』有斐閣、1971年 |
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