登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【高齢者の自立と学習】 高齢者の自立は、「自己選択、自己決定を通じて、自らの人生を主体的に生きていく行為そのものであり、身体的自立、経済的自立を超えた『生活の質』を高めていく行為」として理解することが重要である。 それに対して生涯学習の基本理念もまた学習を通じての「生活の向上」である。塚本哲人によれば、高齢期の生活の向上とは「自立的生活能力の弱化の予防とその現状維持への配慮」であり、そして高齢期の学習とは、この「高齢者個人の自立的生活能力の自己開発に関わる営み」なのである。 【自己決定力を高める学習】 ローウィとオコーナー(Lowy,L.and O’Connor,D.)は、「教育活動を通して個人的利益を得るための鍵は、自身の生活状態に関して個人的自己管理及び統御感覚を強化すること」であり、そうした個人の自主性を高めるために「社会政策立案者や行政官や教育専門家は、高齢者が参加する教育プログラムの立案、展開、評価に、高齢者が多数参加する方法を発展させなければならない」と主張した。そして彼らは、続けて、そうした機会は「個人の観点から生涯を通じての教育の価値に新たに目を開かせ、また高齢期における成長と達成の可能性を高めるような新しい『力の限界』を必ずや明らかにするだろう」と述べている。高齢者の自立を促進するためには、高齢者を学習プログラムの受動的な参加者としてみるのではなく、彼らがその計画、運営に積極的に参画できる機会を与えることが重要であり、高齢者は、そのプロセスを通じて自分の学習は自分の手で管理していく能力を身につけていくのである。この学習における自己主導性の強調は、高齢者の学習そのものの効果を高めるばかりでなく、それは学習の成果を生かしながら、生活を管理していく能力の向上にもつながるであろう。 【学習機会へのアクセスの保障】 学習機会の選択の幅の問題は、高齢者の自立に重要な意味を持っている。例えば、同じ在宅学習を行っている高齢者でも、他の学習機会へのアクセスが困難なために、学習したくとも自宅でしか学べない場合と、多様な学習機会の中から、もっとも自分に適した学習機会として在宅学習を選択し学ぶ場合とでは、その学習活動が持つ意味は、高齢者の自立の観点から見たときに全く異なるということである。前者のような高齢者が、学習における自己主導性を発揮しながら、自らの必要に応じて学習機会を主体的に選択し、安心してアクセスしていけるような生活・学習環境が高齢者の自立のためには必要であり、また、そうした生活・学習環境が自立のための学習をより意味のあるものにするのである。 自立の重要な意味は、自らの生活を管理しながら、自己の実現と成長を追求することにあり、学習がそのために必要な知識と能力の獲得に貢献するものであるならば、健康状態、経済状態の程度に関わらず、すべての高齢者に適切な学習機会へのアクセスが保障されなくてはならない。そのためには、高齢者の自立を高める学習プログラムの開発ばかりでなく、高齢者を取りまく生活・学習環境も含めた、学習機会へのアクセスの支援方策が講じられる必要がある。 br> |
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参考文献 ・塚本哲人「高齢期の学習課題」『文部時報』(平成3年3月号) ・ルイス・ローウィ、ダーレン・オコーナー著、香川正弘、西出郁代、鈴木秀幸訳『高齢社会を生きる高齢社会に学ぶー福祉と生涯学習の統合をめざしてー』ミネルヴァ書房、1995年 |
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