生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月22日
 
 

市町村における大学の役割 (しちょうそんにおけるだいがくのやくわり)

role of the university in the community
キーワード : 大学、生涯学習支援、市町村、地域貢献
原義彦(はらよしひこ)
2.大学の生涯学習支援に対する市町村の期待と大学の意識
 
 
 
 
  【説明】
 ここでは、大学が行う生涯学習支援についての市町村からの期待と大学側が考える重要性を調べた調査の結果(原2005)を示すことにしたい。
 この調査は文部科学省の委嘱を受け、大学-地域連携による生涯学習研究会が平成16(2004)年3月に全国の大学・短期大学(以下、「大学」とする。)、および市町村を対象に実施したものである(標本調査)。この調査の中で、大学の生涯学習支援(学生の教育も含む)の具体的な内容を示す29項目について、市町村からはそれぞれに対する期待の度合いを、大学からはそれぞれについての重要性の度合いを調べた。重要度の度合いをX軸に、期待度をY軸にして両軸を交叉させると、2軸を境界にして全体が4領域に区分される。すなわち、
1)大学の考える重要度も市町村からの期待度もともに高い領域
2)大学の重要度が低いが市町村からの期待が高い領域
3)大学の重要度が高いが市町村の期待度が低い領域
4)大学が考える重要度も市町村の期待度も低い領域
である。
 それらの4領域にどのような項目が含まれているかをみることで、大学の生涯学習支援の役割を考えてみたい。
 まず1) 大学の考える重要度も市町村からの期待度も高い領域には、29項目のうち6割程度の項目がみられた。中でも重要度と期待度の高い内容として、「実践に役立つ専門的な知識・技術を有する人材の養成」「幅広い教養を身につけた人材の養成」「人間性豊かな人材の育成」など、人材の育成に関する項目である。また、この領域では「公開講座の充実」も大学が考える重要度、市町村からの期待度が全体の中では大きい。これと同様に、「中学生や高校生を対象にした演奏会やセミナーを実施すること」「大学教職員を市町村の事業の講師や助言者として派遣すること」「公開講座を市町村で行うこと」などの学習機会提供に関わる項目もこの領域にみられる。また、「学生の社会貢献活動(ボランティア活動等)を推進すること」もこの領域にあり、大学と市町村のそれぞれの意識が比較的高いことがわかる。さらに、「実践的、または実践に直結する研究の推進」「大学の研究成果をわかりやすく住民に公開すること」「基礎的、理論的な研究の推進」など研究とその公開に関わる項目などがみられる。
 2)大学の考える重要度は低いが市町村からの期待は大きい領域では、「資格や免許を認定する講習を実施すること」「自治体職員や教員の研修の機会を大学が設けること」など社会人の職業に関わる知識、技術等の向上に関わる項目がみられる。
 3)大学の重要度の認識は高いものの市町村からの期待が低い領域にみられるのは、「卒業生が仕事上の相談に訪ねることができる環境をつくること」「社会人入学の定員を増やすこと」など社会人が大学に関わりをもてるような環境整備に関わる内容の項目がみられる。この2)および3)の領域は大学が考える重要度の意識と市町村による期待度の意識のずれがみられる領域であるので、実際に支援を行う場合はこの点を考慮しなければならないだろう。
 最後に、4)重要度も期待度も低い領域では、「他大学・短大との単位互換を進めること」「自治体職員や教員が研究員等の形で、定期的に大学で研究や研修を行えるようにすること」などが分布している
 
 
 
  参考文献
・原義彦「市町村と大学との連携についての意識及び連携のための課題〜市町村と大学の意識調査を通じて〜」、文部科学省生涯学習政策局『「生涯学習推進のための地域政策の調査研究」報告 大学と地域の連携によるまちづくりのあり方について』2005、所収
 
 
 
 
 



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