生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

大学開放と評価 (だいがくかいほうとひょうか)

university extension and evaluation/certification
キーワード : 大学開放、大学評価、自己点検・評価、生涯学習成果の評価・認証
猿田真嗣(さるたしんじ)
2.大学評価と大学開放
 
 
 
 
  【大学の自己点検・評価と大学開放】
 大学の自己点検・評価は、平成3(1991)年の大学設置基準第2条における「努力義務化」、平成11(1999)年の同基準の改定による「義務化」を経て、平成14(2002)年以降は学校教育法および同施行規則等における認証評価制度の一部へと移行している。
 学校教育法施行規則第71条の2の規定にも見られるように、大学の自己点検・評価を実施するに際して適切な項目の設定が求められる。「適切な項目」には公開講座など大学開放に関わる項目が含まれるものと解されるが、これまでの大学評価論において大学開放の評価項目を標準化しようとする議論は低調であった。この点、教育・研究における点検・評価において標準的に採用されている項目(志願者数、合格者数、入学者数、在学者数、教員1人当たりの授業時間数、科学研究費補助金の採択状況等)とは対照的である。
【大学公開講座の自己点検・評価の事例】
 大学公開講座の自己点検・評価に際しては、公開講座の状況や受講者、担当講師などに関わる情報を多面的に指標化し、年次的な推移を把握できるような工夫が求められる。
 徳島大学大学開放実践センターでは、平成14(2002)年より公開講座の「プログラム評価」を実施している。それは43の評価項目から構成され、以下の7つの部分に分かれている。
(1)講座の概要:「分野」「講師の所属・人数」「学期」「曜日」「時間帯」「1回の時間数」「セッション数」「総時間数」「場所」「講座のレベル」
(2)受講者の属性:「受講者数」「定員数」「女性の受講者数」「40歳未満の受講者数」「60歳以上の受講者数」「有職の受講者数」「市内在住の受講者数」「修了者数」
(3)教育・学習目標:「知識・教養志向」「趣味・生きがい志向」「地域・社会志向」「職業・実務志向」「仲間づくり志向」
(4)教育・学習方法:「レジュメ・資料の配付」「視聴覚教材の活用」「討議、演習の実施」「実験・実習の実施」「現地見学、現地実習の実施」
(5)講師の自己評価:「受講者の興味と学習意欲を引き出した」「わかりやすい説明・解説を行った」「講座のレベルは適切だった」「施設や設備・機器類は適切だった」「総合的な満足度」
(6)受講成果:「知識・教養が深まった」「趣味が豊かになり、生きがいが得られた」「地域問題や社会問題に関する認識が深まった」「職業・実務に関する知識や技能が得られた」「趣味・関心を同じくする仲間が得られた」
(7)受講者による評価:「授業は興味深く・学習意欲がわいた」「説明や解説はわかりやすかった」「講座のレベルは適切だった」「施設や設備・機器類は適切だった」「講座を受講して満足している」
【大学開放の自己点検・評価の課題】
 大学公開講座の自己点検・評価は、「説明責任の発揮」ならびに「公開講座メニューおよびプログラムの改善」などの観点から重要性を増している。そのため、戦略的計画化などの考え方を参考に、新たな方針・戦略へと確実にフィードバックされるよう、評価を経営サイクルの中に位置づけていくことが必要である。一方、評価活動に投入できる資源(人員、時間、資金など)には限りがあるため、効率的な運用にも配慮を要する。
大学開放の評価においては、このような「実証性」と「実用性」のバランスを保つことが肝要だと言える。
 
 
 
  参考文献
・猿田真嗣「大学公開講座の『プログラム評価』に関する開発的研究」『日本生涯教育学会論集』第23号、2002年
 
 
 
 
 



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