生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2018(平成30)年3月12日
 
 

大学の役割と生涯学習 (だいがくのやくわりとしょうがいがくしゅう)

roles of colleges and universities and lifelong learning
キーワード : 大学の第三の機能、大学拡張運動、大学公開講座、リカレント教育、産学官連携
猿田真嗣(さるたしんじ)
3.「生涯学習機関」としての大学の課題
  
 
 
 
   これからの大学は学術研究や学生の教育など、「間接的な社会貢献」(教育・研究)ばかりでなく、地域社会に存在する教育要求に応えるなど、「直接的な社会貢献」(開放)も重要である。それは、国が求める人材(エリート)養成を主目的とした従来型の大学像に、地域住民の生涯学習要求に応える新しい大学像を付け加えるものと言える。
 すでに様々の取り組みが試みられているものの、大学が真の意味で「生涯学習機関」としての役割を果たすために、解決すべき課題は多い。そのひとつは、大学が実施する個々の教育プログラム(正規課程、社会人向けコース、公開講座など)を、「新しい時代の大学教育」として体系化を図ることである。
 大学の生涯学習対応とは、実は2つの方向で大学教育を拡張することにほかならない。ひとつは「垂直的次元の拡張」であり、「伝統的な学生層」(青年)から「非伝統的な学生層」(成人)へと教育対象を拡張することを意味する。他のひとつは「水平的次元の拡張」であり、教育内容・方法を弾力化して、「定型的な大学教育」から「非定型的な大学教育」へと教育の場を拡張することを内容とする。
 したがって、「生涯学習機関としての大学」を実現するためには、「大学教育の4類型」(添付資料)を前提に、「ティーチング」から「柔軟化・弾力化」「オープン化」「エクステンション」へと拡張を図ることが不可欠となろう。そのような拡張の方向性を明確にした上で、それぞれのプログラム間の有機的関連づけを図るという段階に進むべきだろう。
 具体的には、生涯学習を目的に大学にアクセスする成人学習者に対して、組織性の程度が異なる様々な学習機会(正規学生としての入学、科目等履修生としての受講、公開講座を通じての学習など)の最適な組み合わせを提案し、再教育ニーズに応える支援体制づくりが考えられる。
また、プログラム相互の関連づけを行うために、学習プログラム間の円滑な受け渡しを行うことも重要である。大学での学習歴を証明する「単位累積加算制度」を構築したり、大学公開講座による学習成果を評価・活用する仕組みも求められよう。大学での学習成果を総合的に評価・認証する仕組みが作られれば、生涯学習における高等教育機関の活用が飛躍的に高まることが期待できる。
 人々の生涯学習への支援は、今や大学が取り組むべき必須の課題と言ってよい。それは、大学の「開放」あるいは「社会貢献」といった認識や方策にとどまらず、大学の「教育」機能に織り込まれた教育的拡張の実現を含んでいる。それは伝統的な大学への挑戦であるとともに、長期的には受験競争・学歴主義を緩和し、生涯学習社会の実現を目指す取組としても大きな意義をもつと言える。 添付資料:大学教育の4類型
 
 
 
  参考文献
・猿田真嗣「生涯学習機関としての大学──大学教育の拡張と体系化に関する一考察」日本教育制度学会編『教育制度学研究』第11号、2004年。
 
 
 
 
  



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