登録/更新年月日:2018(平成30)年3月12日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
【大学の三機能】 大学はヨーロッパ中世における学生の自治組織(universitas)に直接的な起源をもつ社会制度である。中世大学は神学、法学、医学などの教育機能を重視していたが、やがて大学は多様な機能を果たすようになる。 ドイツの総合大学においては知識の探求を中心とする研究機能が重視され、イギリスの大学には学寮における個人指導と紳士教育の伝統がある。また、アメリカの大学では、知識の応用と実用主義的な教育・研究機能が重視されている。このように大学は、その時々の文化状況・社会状況に適合した機能を付け加えながら、それぞれユニークな発展を遂げてきたのである。 これまで、「研究」(research)と「教育」(teaching)が大学の二大機能とされ、大学は「学術研究機関」あるいは「高等教育機関」として位置づけられてきた。しかし最近では、「開放」(extension)という「第三の機能」が注目を集めるなど、大学は「生涯学習機関」としても期待されつつある。 【大学開放の歴史】 大学の「開放」とは、一般に、大学が保有する教育・研究上の諸資源を、広く社会に還元・提供することを意味する。その中核的位置を占めるのは、大学公開講座など一般市民(学生以外の地域住民など)が利用可能な大学レベルの教育普及事業であり、その歴史は19世紀後半の大学拡張(university extension)運動にまでさかのぼることができる。 ケンブリッジ大学のスチュアート(Stuart, J.)は、学外からの招きに応じて各地に講義に出向くうちに、大学教育を求める人々の期待の大きさを知る。そこで彼は、成人向けの教育事業に着手するよう大学に提言、1875年、ケンブリッジ大学は公式の活動として巡回講義を開始する。これが大学拡張の起源とされるが、そのアイディアは急速に英米の各大学に広まっていく。 日本でも東京専門学校(早稲田大学の前身)が明治21(1888)年に講義録による校外生制度を開始、同26(1893)年には地方巡回講演会、同40(1907)年には校外生のための夏季講習会が開始されるなど、大学拡張の取り組みは早くから見られる。 第2次世界大戦後には、大学教育の対象を青年に限定すべきではないとの主張が、国際機関などから提起される。たとえば、1960〜70年代に提起されたユネスコの生涯教育論やOECDのリカレント教育論には、大学の機能開放を促進する議論が含まれている。その考え方は、90年代のユネスコ成人教育会議ならびに高等教育会議の各宣言(ユネスコ第5回国際成人教育会議「成人の学習に関するハンブルク宣言」1997年、ユネスコ高等教育に関する世界会議「21世紀の高等教育に関する世界宣言:展望と行動」1998年など)にも認められる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・『新教育学大事典』第5巻、第一法規、1990年(喜多村和之「大学」、塚本哲人「大学の開放」)。 ・藤沢光徳「私学における大学拡張の系譜」大槻宏樹編著『社会教育史と主体形成』成文堂、1982年。 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |