生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年12月23日
 
 

近江八幡市生涯学習社会づくり構想 (おうみはちまんししょうがいがくしゅうしゃかいづくりこうそう)

A design made with Omihachiman-city lifelong learning society
キーワード : 生涯学習推進計画、基本構想、近江八幡市総合発展計画、終のすみか、大学との連携
安部耕作(あべこうさく)
3.大学との連携による近江八幡市生涯学習社会づくり構想の策定
  
 
 
 
  【経緯】
 近江八幡市教育委員会生涯学習課は『近江八幡市生涯学習社会づくり構想』を改訂するにあたり、立命館大学政策科学部と連携した。自然科学系分野が先行する官学連携において人文・社会科学系分野でも連携の糸口を見出すためである。
【連携の方法】
 『近江八幡市生涯学習社会づくり構想』の改訂を研究課題とした2回生対象の基礎演習を立命館大学政策科学部の正規科目として開講した。連携によって解決できると思われる官学双方の課題やメリットを想定し、実際に連携によってどのような成果が得られたかを検証した。学生は基礎演習の中で市民へのインタビューやアンケートを実施したり、基礎演習で議論した意見を提案するなど若者・市外在住者としての客観的な立場から構想策定会議に1年間参加した。 
【大学の課題】 
 官学連携によって解決できる大学側の課題を、学生の実践体験の不足の解消、長期に渡る報酬や責任を伴う厳しい課題の克服による自立した人的能力の獲得、人文・社会科学系分野での大学の社会貢献と措定した。欧米の大学では、コーオプ教育等で教育カリキュラムの中に企業等での実践体験が組み込まれ長期に渡り報酬と責任を与えられる中で、試行錯誤しながら人的能力を獲得していくが日本の大学教育ではそのような面が弱いと考えたからである。また大学が社会の要請に対して十分に専門知識と人材を提供して対応してきたとは言えないと考えたからである。
【自治体の課題】
 自治体側の課題を市民全体や市外の多様な声を施策に反映させること、コスト削減と行政サービスの質の向上、専門知識の行政施策への反映とした。自治体計画の策定委員は高齢の学識経験者等が就任することが多く、行政は若者や市外在住者からの客観的な意見を十分に取り入れていない、安易に計画策定をコンサルタント会社に一任することが多く大学等の専門知識を持つ機関をこれまで有効に活用出来ていなかったと考えたからである。
【課題に対する成果】
 学生は行政職員や構想策定会議の委員と議論し手厳しい意見も受ける中で、基礎演習の中で議論したことと社会の現実の相違を認識し、想像力が働いて問題の背後の本質を考えることが出来るようになったと述べている。市の計画策定を途中で放棄することは許されず1年間プレゼンテーションやレジュメ作成、アンケート・インタビュー実施などを完遂したことで責任感や自信も得たようである。行政側も担当教官の指導に基づく学生の提案やプレゼンテーション、アンケート・インタビューの分析結果を得て、大学の知的資源を活用することが出来た。しかし、学生の生活経験の不足の露呈や官学双方の多忙により十分な連携が出来なかったこと、大学との連携の必然性、実績のあるコンサルタント会社に対して仕事の質が不明確な学生への報酬の適正価格の問題等の課題も残った。
 
 
 
  参考文献
・安部耕作「人文・社会科学系分野の官学連携による教育プログラムの開発の試み−6ラウンド累積KJ法による近江八幡市生涯学習社会づくり構想の改訂を通して−」『日本産業科学学会研究論叢第9号』日本産業科学学会、平成16(2004)年
 
 
 
 
  



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