登録/更新年月日:2008(平成20)年3月14日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
家庭教育は、近年子どもに関わる事件や問題が頻発する中で、その力が低下しているとして問題視される傾向にある。一方で、平成18(2006)年に改正された教育基本法には第10条に「家庭教育」が新設され、子の教育についての第一義的責任は父母その他の保護者にあること、家庭教育において必要な生活習慣や自立心の育成、心身の調和のとれた発達を図ること、国及び地方公共団体が保護者の学習機会や情報を提供するなどの家庭教育支援施策を講ずるよう努力することが法律に明記された。これらのことは、家庭の教育力がこれ以上低下することは、教育の目的である人々の人格の完成の上で非常に由々しき問題であり、その解決のために社会をあげて家庭教育を支援しようとする必要性が広く認識されつつある表れとみることができる。 実際、全国各地で家庭教育学級等の学習機会が提供され、子育てに悩む親の相談に応じる子育てサポーターが育成され、また親同士がお互いの悩みを話し合ったり情報交換ができる子育てサークル多数結成されたり子育てサロンが開設されたりしている。文部科学省からは、家庭教育のあり方を示した家庭教育手帳や家庭教育ノートが配布されている。 このような家庭教育支援の中で最も重要なことは、子の教育の第一義的責任を有する親すなわち保護者の家庭教育に関する学習をどのようにとらえ支援していくか、と考えられる。なぜなら、家庭教育は、教育基本法にもあるように、その自主性が尊重されており、向上や改善を図るためには、保護者が家庭教育をどのように行っていくかを考えて意識を変え行動する、すなわち家庭教育に関する学習を行う以外に方法がないからである。この観点から家庭教育支援の現状を見た時、保護者の学習支援の課題は2点あげられると思われる。第1点目は、家庭教育の学習者として想定される人が今現在親である人に限られていること、第2点目は、学習内容が、赤ちゃんのあやし方や沐浴の方法などどちらかといえば実用的で乳幼児対象のものに限られていることである。この限られた学習で保護者の学習は十分であろうか。例えば、親のあるべき姿として、子どもに愛情を持って接することや、いいところを褒めるようにすること、暴力を振るわないことなどがよくあげられるが、これらの行為は、子どもを持って親になったらすぐできるものでもないであろう。親になる以前から、その必要性を説かれ、日々の行動を見直すことによって、後に親になってからもできるものではないだろうか。 山本恒夫氏は、これからの生涯学習について、「現在のさまざまな人生活動に必要な学習と、次の人生活動の準備のための学習、という2つの学習を同時並行的に行うダイアド型」を提唱しているが、家庭教育に関する学習もこのダイアド型の生涯学習としてとらえ、生涯にわたって継続的に学ぶ内容に体系化され、そのような学習を支援する仕組みが必要と考えられる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 山本恒夫・浅井経子・渋谷英章編『生涯学習論』文憲堂、平成19(2007)年 伊藤俊夫編『変化する時代の社会教育―社会教育委員必携―』改訂版、全日本社会教育連合会、平成19(2007)年 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |