登録/更新年月日:2009(平成21)年1月2日 |
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国際レベル、アメリカ、日本の三つのカテゴリーで、高齢期の生涯学習に関する政策動向を、生涯学習関連、または、学習を目的遂行手段に含む施策を中心に、戦後から現在までを縦断的に概観した。 【国際レベルにおける政策動向】 国際レベルにおける政策動向は「学習必要性認識」「共生」「格差是正とプロダクティビティの視点」の三段階に分かれる。 「学習必要性認識」の段階とは世界的な高齢者人口増加に伴い、高齢化問題が社会問題として認識された1980年代である。1982年に開かれた「第一回高齢者問題世界会議(ウイーン会議)」では、国際的な場で高齢期の教育が高齢化問題に対する政策として初めて取り上げられた。この会議の勧告では、高齢期の生活を保障するためには学習のための環境整備が必要であるとしている。 「共生」の時代とは、全世界で高齢化が進展し、高齢者は数の上でも他世代と共生する存在となった1990年代である。1991年に「高齢者のため国連原則」が採択され、多世代共生のテーマで1999年の「国際高齢者年」が決定された。国際高齢者年の多くの取り組みが、高齢者観に関する人々の意識改革に与えた影響は大きい。 「格差是正とプロダクティビティの視点」は1990年代末から現在までである。発展途上国と先進国の格差の是正を訴え、また、高齢者の生産性に着目した時代である。1997年の「デンバー・サミット」のアクティブ・エイジングの概念、2002年「第二回高齢化に関する世界会議(マドリッド会議)」での格差是正の行動目標などが続いた。 【アメリカにおける政策動向】 アメリカにおける政策動向は「社会サービス」「学習機会の拡大」「格差是正とプロダクティビティの視点」の三段階である。 戦後から始まった高齢化率の上昇に伴い、1960年代までは高齢期の学習は福祉と協働しつつ「社会サービス」の一環であった。1950年には「全米高齢化問題会議」が開催され、この会議では、高齢者への教育によって高齢化問題を解決しようとする視点に立ち、教育は重要なテーマの一つと認識された。 その後、1970年代は、高齢化率が10%台となり、増加する高齢者は比較的健康かつ高学歴で大きな人口集団となった。コミュニティ・カレッジの発展政策に伴い高齢者の「学習機会の拡大」が見られた。教育老年学が学問として認知され確立してきたのもこの時代である。 1980年代から現在まで、経済の低迷、多民族国家などの点から、国内の経済格差は広まった。この時代はエイジズムへの反論が生まれ、高齢者はより生産的に捉えなおされた。この時代は「格差是正とプロダクティビティの視点」の段階である。 【日本における政策動向】 日本の高齢期の生涯学習の動向は「基盤整備」「生きがい対策」「共生と介護予防」の三段階に分けられる。 戦後の公民館運動と共に出発した高齢者の学習活動は、昭和38(1963)年の老人福祉法で老人クラブがその位置づけを明らかにされ、昭和48(1973)年には文部省による高齢者教室への補助が開始されている。戦後から1970年代は「基盤整備」の段階である。 次に1980年から1990年代半ばまでが「生きがい対策」の段階である。「長寿社会対策大綱」や「ゴールドプラン」で高齢者の自立を支援するために学習が推奨された。 90年代半ばには高齢化率が14%を越え、高齢者は数的にも少数派ではなく一般市民として遇される。高齢者は共生する市民であり、介護予防をして元気で過ごすことが期待されている。現在までを「共生と介護予防」の時代と名づけた。 br> |
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参考文献 ・堀薫夫『教育老年学の構想』学文社、1999年 ・OECD編『OECDの提言 高齢化時代の教育と雇用政策』かもがわ出版、 2001年 ・福武直・青井和夫編『21世紀高齢社会への対応 第1巻 高齢社会の 構造と課題』東京大学出版会、1986年、238-240頁 ・ Butler, R.N.& Gleason, H.P., Productive Aging, Springer Publishing Company,1985 |
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