登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日 |
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対話としてのアートという概念は、芸術文化の「受け手」に着目した鑑賞方法の実践を通して、コミュニケーション能力の育成という、現代的な教育課題と深く結びついている。 現代社会は他者への干渉を避け、個人を尊重する傾向が強い。その結果、人々は他者の言葉に耳を傾けることなく、互いの意見を主張し合うことでしか、コミュニケーションを取ることができなくなっている。 対話としてのアートの重要性は、「個人の視点」を育み、人間関係や社会との結びつきを促進するための機会を提供することである。現在それは美術館や文化センター、大学、小学校などのさまざまな場所で実践され、証明されつつある。その一例として、滋賀県や東京の美術館(ボーダレス・アートミュージアムNO−MA、松下電工汐留ミュージアム)では、知的障がい者の作品を集めた展覧会の中で、参加者がさまざまな感想を自由に話し合うワークショップが開催された(平成20(2008)年)。普段、美術館のような場所でさえも接することのできない作品の数々は、参加者に衝撃的なインパクトと感動を与えただけでなく、障がい者アートが福祉の枠を超えて評価されるきっかけとなり、さらには多くの人々の理解と関心が作り手である障がい者にも向けられる結果となった。 このように、自分の視点を持ってアート作品の解釈に取り組むこと、すなわちアート作品とのコミュニケーションを重ねることで、周りの環境や社会を改めて捉え直し、さまざまな見解や解釈を学ぶことで、社会や文化に対する見聞を深めることができるようになる。そうした経験を実生活においても自然に応用していくことは、アートの世界に限らず、人間の根源的な力を開いていく上で欠くことのできない要素となる。このように、誰もがコミュニケーションに参加し、自由に意見を交流し合い、対立ではなく共存するための学びとしての役割を持つ対話としてのアートは、現代社会に相応しいアートの在り方と捉えることができる。 br> |
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参考文献 ・産経新聞「障害者アート自由に感じて」2008年4月21日掲載 ・畔柳和枝「対話としてのアート:鑑賞教育から生涯学習の可能性を探る」日本生涯教育学会年報、第28号、2007年 |
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