生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

ポートフォリオと生涯学習 (ぽーとふぉりおとしょうがいがくしゅう)

portfolio and lifelong learning
キーワード : 学習歴、ふり返り、評価力、自己志向のポートフォリオ、他者志向のポートフォリオ
山川肖美(やまかわあゆみ)
1.ポートフォリオの定義、内容、分類
  
 
 
 
  【定義】
 ポートフォリオ(portfolio)とはport(=to carry)と folio(=leaf)が結合した単語で、The Oxford English Dictionaryでは「書類や印刷物、デッサン、地図、音符などをまとめるためのケースであり、通常は紙ばさみ式の形を持つ」ものとされる。これが、1970年代以降生涯学習との関連で取り上げられるようになると、転じて、「学習者の過去の経験や達成してきたことを蓄積した情報ファイル」という意味を持つようになった。さらに経験イコール学習ではないことを強調して「学習してきたことに対する各人の意味づけを表現するための生産的な手段」という定義も認められる。
【内容】
 ポートフォリオには、学習活動の過程と成果(学習歴)の記録、学習歴を裏付ける証拠、学習歴に対する思い、今後の学習目標・学習計画の4点を包摂することができる。
 具体的な手順としては、最初に過去の学習歴を記録する。過去の学習経験を振り返り、自分にとって有意味な学習成果を得た経験を選出し、一定の分類枠組み(時系列や領域別等)にそって正確に記述する。この際、ライフラインやスキル・チェックリスト等が振り返りを促す手段として利用されることもある。記述したらそれを裏付ける証拠を付しておく。ここでいう証拠とは、認証を受けたものに限らず、第三者の推薦文や実物見本等も含んでよい。過去の学習歴の記載が完了したならば、後続の学習について同様に記録を増補していく。こうしてポートフォリオは、各自に特有の生涯学習活動とその成果、意味づけ、証拠を記録した生涯学習史になる。
【分類】
 上に述べた手順で作成すると、最初に到達するのは「学習者がポートフォリオに含み得る可能な限り多くの情報を収集する準備」の段階で、これはジャクソンとキャファレラのいうフォリオ(folio)に相当する。
 これに対して、フォリオを、「査定者の目標に合わせた形式・内容に体系化」し直したものを、ジャクソン等は狭義のポートフォリオと呼ぶ。この場合、学習歴を精選していく際の基準は、各人ではなく他者(教師や大学等の機関、企業等)に拠る。大学における入学要件や単位認定のために、非伝統的な査定手段として登場したポートフォリオ査定はその代表的なものである。ポートフォリオ査定はCAEL(Council for Adult and Experiential Learning)によって「学生によってカレッジに提示され、学外の学習に対する単位認定あるいは承認を要求するコミュニケーションツールである」と定義される。同査定は、学校教育や成人学習、雇用の場等、大学以外の場でも用いられている。
 いずれにせよ、狭義のポートフォリオは、フォリオをもとに編集・作成されるものであるから、信頼できるフォリオをつくっておくことが、狭義のポートフォリオの信頼性・妥当性を確保する上で肝要である。
 こうしたフォリオと狭義のポートフォリオという分類と両者の関連性は、他にも、自己志向のポートフォリオと他者志向のポートフォリオ、プロセス志向のポートフォリオと結果志向のポートフォリオ、探究型のポートフォリオと特定領域型のポートフォリオ等の分類枠組みにおいても看取される。
 
 
 
  参考文献
・ 山川肖美「生涯学習におけるポートフォリオの機能−学習成果の評価機能を中心として−」中国四国教育学会編『教育学研究紀要』第41巻第1部、1995、pp.248-253。
・ Jackson L.. And Cafferella,R.S., Experiential Learning :A New Approach., Jossey-Bass Inc., 1994.
・ Knapp,J., Assessing Prior Learning: A CAEL Handbook., CAEL, 1976.
 
 
 
 
  



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