登録/更新年月日:2009(平成21)年4月8日 |
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安全や安心は、人類共通の願いである。生命や財産が脅かされる時、人は、意識的のみならず無意識的にも防衛本能を動員して危機に抗しようとする。こうした本能的な行為は他者からの強要によらない、個々人の内発的で自主的なものである。ここにボランティア活動の原点がある。これを裏づけるように、危機や外敵などへの対峙は、はじめ個人の自発的意思に委ねられ無秩序で非組織的であるが、外部からの攻撃や災害などを経験して、備えを徐々に社会化させ、義勇兵・志願兵のような組織的・制度的なものへと発展させていく。 ボランティアという言葉は、ラテン語のVoluntarius(自発的な)、voluntas(意志)、volo(欲する、したい)などを語源としている。それが英語圏の辞書にvoluntary(自由意志でする、自発的な)が登載されたのは1385年であり、それから200年以上を経た1600年にvolunteer(義勇兵、志願兵)が収載された(研究社『英語語源辞典』平成11(1999)年)。 わが国において、ボランティアに関する言葉をはじめて収載した『暗危利亜語林大成 草稿 四』(文化11(1814)年)は、「Voluntary」を「ホリュンテリー」とルビをつけて示し、「放縦ホシイママ 」と訳している。その後、「名実ともにわが国最初の英和辞書」といわれる『英和對譯袖珍辞書』(徳川幕府洋書調所発行文久2(1862)年)は、「Voluntarily」「Voluntariness」「Voluntary」「Volunteer」「volunteer-ed-ing」など、5つの単語を挙げ和訳している(研究社『日本の英学100年』昭和43(1968)年)。このように、英語圏でもわが国においても、「ボランタリー」は「ボランティア」に先んじて登場している。 これが国民の間に定着するのはごく最近のことである。『現代用語の基礎知識』は、昭和35(1960)年版の外来語コーナーに「ボランティア(volunteer)義勇兵、志願兵」を初出し、昭和43(1968)年版の「社会福祉」ジャンルで「保健衛生や社会福祉をはじめとする公共の福祉の分野で、それらの事業の重要性を理解し、その事業を援助するため、自分の技能と時間を自主的に、無報酬で提供する人たちをいい、多くは他に本業をもっている。」と説明した。ここに示された「公共」「自主的」「無報酬」「時間と技能の提供」「本業以外」等のボランティア観は、生涯学習審議会答申(平成4(1992)年)がいうボランティアの基本理念(自発性、無償性、公共性、先駆性)にも通じている。さらに『広辞苑』は、1969年の第2版第1刷にはじめてボランティアを登載した。このように、わが国でボランティアという言葉が市民権を得たのは1960年代のことである。 ところが「奉仕」と「ボランタリィ」や「ボランティア」は混乱して用いられている。奉仕がサービス(Service)を、ボランタリィが自発性や任意性を意味するように、両者は一線が画されているのである。例えば、公務員が国民のために奉仕すること、軍人が兵役につくこと、タクシー運転手が乗客を目的地まで送り届けること、などのような職種はサービス業といわれ、自発的でなくとも、報酬を得ても構わない。 青少年の自発性・自主性の伸張を図る観点からは、彼らが「奉仕」と「ボランタリィ」「ボランティア」の違いを自覚できるよう留意することが求められる。 br> |
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参考文献 |
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