生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月3日
 
 

イギリスの高等教育入学準備教育 (いぎりすのこうとうきょういくにゅうがくじゅんびきょういく)

Access to HE Provision for non-traditional students in Great Britain
キーワード : 高等教育社会人入学、非伝統的学生、入学準備教育、イングランド、スコットランド
柳田雅明(やなぎだまさあき)
2.イングランドでの取り組み
 
 
 
 
   イングランド・ウェールズにおける成人向け高等教育進学準備課程は、1978年に最初のものが設けられたとされるものの、ピーター・ジャービス(Peter Jarvis)は、ロンドンのシティ・リット(City Lit)における「フレッシュ・ホライズン型コース(Fresh Horizons-type courses)」としている。この「フレッシュ・ホライズン」は1966年まで起源が遡れ、今日まで継続している。
 1987年には中央政府によってその拡大に向けての推進策が提示され、その実際の開始は1989年からであった。「1992年継続・高等教育法(1992 Further and Higher Education Act)」は、アクセス・プログラムを高等教育入学準備に向けての継続教育(further education)として法的に明確に位置づけている。
 アクセス・プログラムでは、GCE-AレベルやGNVQ上級など大学等入学の基礎要件となる全国共通試験による「資格」の取得が目指す場合もあるものの、各課程独自に設定される「高等教育へのアクセス資格(Access to HE certificates)」が通常目指される。その取得に当たっては、学習者の企業内や職場等での学習経験によって得た成果についても評価判定対象となりうる。また、個別大学と提携して取り組まれる場合も多い。
 1999年から2001年までは、「高等教育へのアクセス資格」を基礎要件とした入学者を取り出した数値が公表されていた。学士号を目指す第一学位(first degree)課程(学部)に入学した数は、1999年は10,712 (男3,717、女7,004)、2000年は10,692 (男3,605、女7,187)そして2001年には10,516(男3,338、女7,178)であった。高等教育水準職業資格である高等全国証書(Higher National Diploma)の取得を目指す課程に入学した人数は、1999年は548 (男254、女294)、2000年は610 (男290、女320)、そして2001年には554(男291、女263)であった。この1万人強という数値は、30万人を超えるイギリス全体の中に占める割合はそれほど大きいとは言えないものの、特に25歳以上において7,962人という数値は、「アクセス資格」は、量的な側面からも高等教育機関入学において相当に機能していることがわかる。 
 ただ、1997年開始のニュー・レーバー(新労働党政権)が推進する学習機会からは外れている。そのニュー・ディール(New Deal)政策で目指す自立とは、敢えて日本に当てはめれば、中学校を出て1年間専修学校で学んで身に付く水準の学習機会で身につく力量である。たしかに若年層に対しては、後期中等教育水準までを国策として支援している。ところが、成人向け高等教育進学準備課程に公的資金を導入するかどうかは、地方が限られた財政の中で選択することになっている。そのため、地域によってその授業料はかなり異なっている。特にロンドンでは、年間900ポンド(約20万円)台にもなっている場合も見られる。

 
 
 
  参考文献
・柳田雅明「イギリスにおける成人のための高等教育入学準備課程」『日本生涯教育学会年報』22、2001年.
・Peter Jarvis, Adult and Continuing Education: Theory and Practice, 2nd ed. London: Routledge, 1995.
 
 
 
 
 



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.