登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【動向と課題】 大学開放事業の成否は、それに従事するマンパワーの質・量にかかっている。マンパワーについては、教員のみならず事務職員等の存在ならびにその職務内容が重要であるが、ここでは教員に絞って実態を記し、そこにおける課題を抽出することにしたい。 国立大学(法人)生涯学習系センターの人的構成を調べた調査によると、センターに配置された教員数は、1名から8名までの幅があり、最も多いのは2名であった(被調査21大学中15大学)。教員数という指標は、各センターの沿革や学内における位置づけ、事業規模等の諸要素との関連を見なければ、それ自体では意味をなさないが、学内施設として決して「多い」数ではないことは明らかである。さて、調査では、教員の専攻分野を尋ねた。結果は、社会教育・生涯学習が全46名中20名程度を占めた。教育学全般に広げると29名にも上っている。これに心理学系を加えると、全体の四分の三が教育・心理学系であることが分かった。これに対して、センター長の専攻分野はやや多様性を見せるが、ここでも教育学系がほぼ半数を占めていた。このことは、大学開放という生涯学習事業を本職とするマンパワーとして、一見相応しいように見える。しかし、大学開放を大学の基本機能として発展させる上で、専攻が適合しているだけでは十分ではない。 大学教員としての教育・研究能力は別として、一般に、センター教員に必要な能力は、a. プログラム開発力、b. マーケティング能力の2点に集約されよう。こうした能力・資質は、教育学系の大学院では育成されていない。したがって、やむなく就職後の実務経験を通して養成するほかないが、更に体系的な研修システムが完備され、同時に段階的な資格制度と連動していることが望ましい。初期研修が制度化され、5年程度の実務経験の後に、リフレッシュ研修が積み上げられる、等々。また、リーダーシップ研修を通過したものに限って、例えば「大学開放ディレクター」資格を付与し、センター長を委嘱する等の制度的成熟化に向けた構想を実現すべきであろう。 ところで、実際の実務の現場では、大学開放に従事する教員は、事務職員の数が少ないことによって、本来事務職員が果たすべき業務を否応なく分担している。例えば、教室のセット等は日常的であるが、公開講座の受付業務を担務するケースもある。講座開発等の創造的業務に従事する時間的余裕が少ない。地域社会とのかかわりの中で独創的な業績をあげている大学もあるが、総じて個人の資質にのみ依存しているのが現実である。 この一方で、センター教員は、センタープロパーの要員として、流動性の乏しい人事制度の中に閉じ込められている。学内外と開放的な人事交流があり、様々な専攻の人材が大学開放を進めることが理想である。それによって、大学開放が大学の内部で特定のスタッフによる特殊な機能としてではなく、大学本来の基本機能に転化する可能性が増幅する。センター教員のモチベーションは、一般には高いが、それをサポートし、全学的(全国的)な視野で職能開発をするシステムが整備される必要がある。 br> |
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参考文献 ・廣渡修一「生涯学習系センターの性格と役割発展 人的側面からの考察」『大学における生涯学習推進に関する研究 文部省生涯学習局委嘱「生涯学習の促進に関する研究開発」研究調査報告書』「大学における生涯学習推進」研究プロジェクト、2000年 |
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