生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

パートナーシップとコラボレーション (ぱーとなーしっぷとこらぼれーしょん)

partnership and collaboration
キーワード : 連合体、協働、パートナー、新しいアプローチ
池田秀男(いけだひでお)
3.成功への留意点
  
 
 
 
   以上は、パートナーシップへの期待がいかに大きいかの一端を示すものであり、このことを受けていま国の内外ともに、国や自治体や地域の基幹的事業としてこのパートナーシップとコラボレーションの促進と支援のための助成制度や基金制度が設けられるようになってきている。こうした現状に立って将来を楽観的に展望すると、パートナーシップとコラボレーションは、これまでともすると理念はともかく実際には旧来の教育の枠組に閉ざされがちであった生涯学習施策を、その枠組から脱皮することを可能とする突破口を開くポテンシャルを秘めているかも知れない。
 しかし現実には長年にわたって依拠してきた従来の施策の枠組とそれにフィットした関係者の「心の習慣」を変革する問題があり、その実現はそう簡単ではない。そうした中で新しいパートナーシップ構想や計画が戦略的に策定・推進され、一方で優れたガイドブックやマニュアルが開発され、他方でその事業実績や計画評価を含む種々の実施報告書なども公表されている。それらを見ると、同じパートナーシップ・プロジェクトといっても多様な内容と領域とタイプがあり、それによって新しいアプローチの成功に向けて留意すべき事項も簡単に要約できないところがある。しかし単独の組織や機関に閉ざされた「自己完結型」のアプローチから地域社会の複数の機関や施設の連携協力による「地域完結型」の生涯学習支援体制への転換を目指す新しいアプローチは、今や決定的となってきているように見える。そうした現状認識に立って、この新しい施策枠組とパートナーシップのアプローチを充実・改善しながら、成功するための一般的な留意事項を整理するとすれば、次のような点をあげることができるであろう。
・パートナーシップは他律的に立ち上げるのでなく、新しいアプローチとして施策化の根拠と正当な理由づけ及び達成目的の明確化を共有し先行させること
・各パートナーの役割と責任と相互の自立性を尊重した参加形式及び権限関係を明確化すると共にパートナー間の協定事項を共有化すること
・パートナー間の情報の共有と意思疎通への開放性、透明性、信頼性の確立と相互補完性、付加価値の創出と共有による相乗効果の具現化を図ること
・パートナーシップの持続性と発展性へのフィードバックや点検・評価機構及び受益者の効果的な参加や地域の支持を獲得することも含め、適切な管理運営体制を整備すること
・合理的安定的運用のための共同財源の確保と関係スタッフの専門的知識と技能の開発及び行政責任の適切な位置付けなど
 生涯学習の分野におけるこのような新しい枠組に立脚した新しいアプローチは、わが国ではいま始まったばかりであり、関係者の努力だけでは限界があり、その成功は一に生涯学習の関係者と研究者のパートナーシップのもとに新しい発展段階の生涯学習を支援・発展できるか否かにかかっているように思える。
 
 
 
  参考文献
・Naomi E. Sargant, Effective Local and Regional Partnerships for Lifelong Learning (Working Paper ), NAGCEL, 1998.
・Sandra Kerka. Developing Collaborative Partnerships: Practice Application Brief no.N/A,l997.
・今西幸蔵「新たな公共を形成する『協働』概念に関する考察」日本生涯教育学会年報第24号、2003.
 
 
 
 
  



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