登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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1)イギリスの職業資格の誕生と種類 イギリスでは、19世紀、民間の専門職団体の会員資格に端を発し、職業資格が設けられるようになった。1815年の薬剤師資格が初めである。専門職団体は複数あり、それらは後にあらゆる水準の資格について試験、検定を行う資格付与試験団体(Awarding and Examining Bodies)となった。主要な団体としては、王立(勅許)技芸協会試験委員会(Royal Society of Arts(略称RSA)Examinations Board)、ロンドン・シティ・ギルド協会(City and Guild of London Institute、略称CGLIまたはC&G)などがある。また、政府系公益法人として発足した団体から発展した商業・科学技術教育協議会(Business and Technology Education Council、略称BTEC)がある。 RSA試験委員会は経営管理、事務・秘書、商業、情報技術、語学等の広範囲の科目の資格試験を実施している。CGLIは工業技術系を中心に、500種類近い資格を提供しているが、その中には職業関係のものの他に、成人教育に関わる教養的(general)、余暇的(leisure)分野のものも含まれている。BTECは農業、商業・金融、ホテル・料理宴会出張サービス業、保健・介護、自動車整備、コンピュータ・情報技術等の業種別資格を授与している。また、資格を3段階にわけ認定している。BTEC初級資格(BTEC First Certificate)は中等教育修了程度で義務教育終了者(School Leaver)などを対象に、BTEC全国資格(BTEC National Certificate)は初級資格の上位資格として、BTEC高等全国資格(BTEC Higher National Certificate)は高等教育水準の資格として有資格者を対象に設定されている。 このほかにも、それぞれの分野の業界団体が上記の主要な団体との協力のもと独自に資格を与えたり、各団体がそれぞれの評価基準のもとに資格を設定したりするために、類似の資格が多数存在している。 2)背景 イギリスでは、徒弟制(apprenticeship、1563年に徒弟法が制定)を通しての職業訓練及び就職が1960年代半ばまでは主流であった。一方で、1867年のパリの万国博覧会をきっかけに、RSAやCGLIは国際競争に打ち勝つための技術者を中心とする人材育成の観点から、職業教育の実施とその成果としての職業資格授与を普及させた。その後、職業資格は主要な資格付与試験団体を中心に多くの業界団体により設定・授与されるものとなった。 それから約100年後の1970年代、イギリスを襲った産業構造の変化とそれに伴う不況、若年失業者の増加の中で、徒弟制による職業訓練は行き詰まりをみせた。他方、科学技術の進歩や産業構造の変化に対応するための新たな種類及び段階の資格はさらに設けられ、加えて、若者に対する就業のための基礎的・準備的な技能・知識に関する教育・訓練とそれに伴う新しい資格の設定が何回も試みられた。現代のイギリスでは、就職には職業資格の有無が最も重要な意味を有することとなり、資格取得のための教育訓練の整備や資格の体系化が求められている。 br> |
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参考文献 ・柳田雅明著『イギリスにおける「資格制度」の研究』多賀出版、平成16(2004)年 ・R.オルドリッチ著、松塚俊三・安原義仁訳『イギリスの教育―歴史との対話』玉川大学出版部、平成13(2001)年 ・松永(角替)由弥子「イギリスの資格制度の現状と改革の動向」日本生涯教育学会年報第15号、平成6年(1994)年 |
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