生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月15日
 
 

仕事移動診断−社会参加活動支援− (しごといどうしんだん−しゃかいさんかかつどうしえん−)

キーワード : 仕事移動診断、生涯学習支援、社会参加
田井優子(たいゆうこ)
2.仕事移動診断の方法−事象把握の枠組−
 
 
 
 
  【定義】
 仕事移動診断の方法とは、仕事移動診断の目的を達成するために用いる手段、道具、それらを用いる順序、工夫、技術などのすべてのことである。
【説明】
 仕事移動診断は、生涯学習支援として行おうとするものである。学習は考え方や行動の仕方を変容(形成を含む)する過程であるから、仕事移動診断の目的は、仕事移動希望者が自己の現状をはっきり認識し、その上に立って仕事移動のための考え方と行動の仕方を作り上げたり、変えたりしていくことを支援するところにある。したがって、仕事移動診断の方法も、生涯学習支援という観点に立って組み立てられている。本項では仕事移動希望者の現状を捉える方法―事象把握の枠組―について説明する。
●事象把握の枠組
 仕事移動診断では、山本恒夫により体系化された事象理論を援用し、仕事移動希望者の現状(仕事移動)を事象把握の枠組によって捉えている。
 山本よれば、事象とは、人間の「意識」が「情報」を介して捉えたある瞬間の「物事」の総体である、としている。この場合の「物事」には、「もの」だけではなく「できごと」も含まれる。「意識」は人間の脳の神経回路網によって生み出されるもの、「情報」は人間が「物事」を認知する際の媒介的存在であり、「物事」は「情報」ないし「意識」の両方あるいはいずれか一方が欠けていても捉えることはできない、としている。なお、ここで「意識」「情報」といっているのは、「物事」の中から「意識」や「情報」としての機能をもつものを特に取り出して、「意識」「情報」と呼んでいるに過ぎない。したがって、「意識」や「情報」をそれぞれの機能面からではなく、単なる「物事」として捉えることもできる。
 以上のことを事象把握の枠組として示したのが図1である。事象理論では、事象の要素を次のように捉えている。
○意識枠の中の内容としての要素
 意識についての意識(C11)
 情報についての意識(C12)
 物事についての意識(C13)
○情報枠の中の内容としての要素
 意識についての情報(C21)
 情報についての情報(C22)
 物事についての情報(C23)
○対象枠の中の内容としての要素
 物事として捉えられる意識(C31)
 物事として捉えられる情報(C32)
 物事としての意識・情報を除くすべての物事(C33)
 ごく簡単にいえば、我々が何かを事象として把握できるのは、対象枠の中の内容(「対象内容」)が情報枠の中の内容になり、さらに意識枠の内容にもなって3つが揃っている場合で、3つの枠のどこかに別のものが入っていれば何かを事象として捉えることはできない。
●仕事移動の診断に必要な項目
 仕事移動診断では仕事移動を事象として捉え、仕事移動の可能性を診断する。仕事移動診断のためには、診断に必要な項目を取り出す必要があるが、ここではそれを事象把握の枠組によって取り出した。
 C11:仕事移動意識
 C12:仕事移動情報、診断情報
 C13:仕事移動の知識蓄積、診断データファイル
 C21:仕事情報の認識
 C22:仕事情報
 C23:仕事の資料ファイル、データベース
 C31:選択された仕事の認識
 C32:選択された仕事の情報
 C33:選択された仕事
これらは当面必要と考えられる項目で、今後必要に応じて取り出していくことになる。
 添付資料:図1 事象把握の枠組
 
 
 
  参考文献
山本恒夫『事象と関係の理論』筑波大学生涯学習学研究室、平成13(2001)年
山本恒夫「生涯学習支援としての仕事移動診断の構想―事象理論からのアプローチ―」八洲学園大学紀要、創刊号、平成17(2005)年
山本恒夫「仕事移動診断の方法」八洲学園大学紀要、第2号、平成18(2006)年
 
 
 
 
 



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