生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年8月27日
 
 

図書館の経営 (としょかんのけいえい)

library management
キーワード : 図書館資源、図書館サービス、図書館職員、PFI、指定管理者制度
青柳英治(あおやぎえいじ)
3.図書館経費としての「カネ」と多様化する運営形態
  
 
 
 
   公立図書館の経費は、主として設置自治体の地方税の中の普通税があてられる。そのため、図書館の予算についても、地方自治法が規定する原則に依って、編成、成立、執行、決算というプロセスを経ることになる。
 図書館の予算は、概ね10月上旬から翌年の2月中旬にかけて、次のプロセスを経て編成される。まず、首長が提示した予算編成方針を受け、図書館としての基本方針と重点施策を決定し、予算要求原案を作成する。その後、教育委員会事務局内で調整のうえ、財政担当部門に提出する。次に、財政担当部門での調整・査定を経て、首長による査定が終了すると、図書館に査定結果が内示される。最後に、本会議での採決・可決を経て成立する。
 予算の執行では、内容が複雑化・煩雑化する傾向にある。また、近年、図書館関連の予算額は、減少しつつある。公共図書館の予算の中で、資料費は利用者サービスに直接的に影響するため、重要な経費である。必要となる資料費を設置自治体からいかにして獲得し、限られた予算で利用者に資料を収集・提供していくかが課題となっている。
 多くの図書館では、近年、コスト削減や業務合理化を図るため、業務の外部委託や派遣職員の受け入れなど、図書館の運営に多様な手法を取り入れている。例えば、PFI(Public Finance Initiative)と指定管理者制度である。
 PFIとは、民間セクターの持つ経営力、技術力、資金力などを活かした社会資本の整備手法である。民間事業者が、図書館を始めとする公共施設を設計、建設、資金調達、管理運営し、長期契約のもとで発生するリスクを官民で分担することで、利用者への良質な公共サービスの提供を可能とする。日本では、1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が施行された。図書館の整備事業では、三重県桑名市や東京都稲城市などで導入されている。
 指定管理者制度とは、図書館などの公の施設の管理、運営を民間企業やNPOを含む民間事業者に行わせることができる制度である。2003年に「地方自治法」が改正されたことにより導入された。民間事業者の創意工夫や経営管理手法を活用することで、図書館サービスの向上と行政コストの削減が期待できる。2008年現在、東京都千代田区立図書館や山中湖情報創造館など169の市区町村立図書館に導入されている。
 こうした図書館の運営手法には、民間事業者の持つ経営ノウハウを導入できるといったメリットがある反面、公共部門の図書館職員の人材育成や仕事のノウハウを蓄積・継承しづらくなるといったデメリットがある。そのため、導入に際しては、こうした点を考慮のうえ、検討する必要がある。
 
 
 
  参考文献
・日本図書館協会図書館ハンドブック編集委員会編『図書館ハンドブック』第6版、日本図書館協会、2005、p.138-146.(竹島昭雄、岸本岳文「C.公立図書館の運営」)
・日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編『図書館情報学用語辞典』第3版、丸善、2007、p.95、205(「指定管理者制度」「PFI」)
 
 
 
 
  



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