生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2016(平成28)年12月26日
 
 

グローバル人材の育成のための青少年国際交流プログラム (ぐろーばるじんざいのいくせいのためのせいしょうねんこくさいこうりゅうぷろぐらむ)

キーワード : グローバル人材、国際交流、青少年教育施設、東アジア、文部科学省
松浦賢一(まつうらけんいち)
3.「グローバル人材の要素」の検証
  
 
 
 
  (1)調査方法・内容
 実施した国際交流事業における「グローバル人材の要素」を検証するため、日本人参加者23名を対象に、事業開始時と終了時に質問紙調査を行った。質問紙として「グローバル人材の要素」(+外向き志向)29項目の事業評価用アンケートを用いた。23名全員から回答を得て、有効回答率100%であった。
 分析対象者ごとに、「グローバル人材の要素」(+外向き志向)の得点として29項目の合計値を4件法で算出し、9つの構成因子の得点についても能力ごとに合計値を算出し、各調査時期における平均値と標準偏差を算出した。事業前・後の結果の差を見るため、対応のあるt検定を用いて分析した。
(2)「グローバル人材の要素」の変容
 事業後に行ったポスト調査での「グローバル人材の要素」(+外向き志向)の平均値が上昇しており、有意差が認められた(p<.001)。構成因子では、全ての項目において平均値に有意差があった。
(3)考察
 本研究の結果から、本事業において、日本人参加者の「グローバル人材の要素」(+外向き志向)が向上するという可能性が示唆された。
 特に、実施したプログラムにおいて、「語学力」と「コミュニケーション能力」「異文化理解」が有意に高かったのは、各国の参加者と一緒に体験活動したり、対話したり、一緒に生活する中で、他国の文化に触れる機会が多かったことと推察する。また、1日目は、日本人参加者が北海道の歴史や文化について英語でプレゼンテーション、3日目は、留学生が母国の歴史や文化についてプレゼンテーションし、各国の言語や文化についての参加者交流が図られたことも特筆すべきである。
 「協調性・柔軟性」や「外向き志向」が有意に高かったのも、寝食を共にした生活やフェアウェルパーティにおいて、英語のレシピを見ながらのクッキングを実施するなど協同による様々な体験活動によるものと考えられる。このような体験活動は青少年教育施設等を活用して実施されることが多い。
 「主体性・積極性」「責任感・使命感」が有意に高かったのは、環境問題等グローバルな問題解決のために意見交換し、環境保護活動の先進的な取組をしている富良野市や外国人観光客の交通ルールやマナーの問題が多発している美瑛町においてフィールドワークを行い、問題解決のために、参加者が共同で環境保全活動や観光客へのマナー啓発活動を行ったことが要因として考えらえる。
 「チャレンジ精神」「責任感・使命感」「日本人としてのアイデンティティ」が有意に高かったのは、アイヌ文化の「共生」をプログラムのコンセプトとし、アイヌの人々の文化とその心にふれることによって、自然との共生や多様な文化が共存できる、豊かな社会づくりへの意識を持つことができたと考えられる。日本の青年と東アジアの留学生がグローバル・アクションプロジェクトを実施したことも特筆すべきことである。
 本研究では、文部科学省委託事業「青少年教育施設を活用した国際交流事業:ユース オブ ワールド 2015」を事例に、グローバル人材を育成する青少年国際交流プログラムの成果を検証した。
 その結果、日本の青年と東アジアの留学生が一緒に体験活動をするプログラムを取り入れた国際交流事業において、日本人参加者の「グローバル人材の要素」が高まることが明らかになった。
 
 
 
  参考文献
・松浦賢一、「『グローバル人材』の構築化を図る青少年国際交流プログラムの実践研究―青少年教育施設を活用した東アジアの青少年交流から―」、日本生涯教育学会論集・37、2016年、pp.161-170。
 
 
 
 
  



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