登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日 |
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【字義】 生涯学習という言葉はどの範囲までの学習を指すのかという意味。生涯学習の推進、振興、援助、支援をする際によく問題となる。 【説明】 生涯学習を人間の一生という時系列の次元で捉える場合には、生涯学習の範囲などはあまり問題としないのでわからないが、生活・社会の次元でみれば、社会教育の講座などでの学習、学校での学習、企業での学習、文化活動、スポーツ活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動の中で行われる学習、個人学習など、実にさまざまな学習が行われている。 生涯学習を推進、振興、援助、支援する場合、それらのすべてを対象にすることは出来ないので、その範囲が問題となる。その場合には、生涯学習を社会教育の講座での学習、学校での学習だけに限定することもできるし、文化・スポーツ活動、ボランティア活動などの中での学習まで範囲を広げることもできる。 生涯学習の範囲はきわめてあいまいなので、生涯学習をファジィ(fuzzy、あいまいな)概念で捉えると問題を処理できる。 ある活動を学習性の有無で捉える場合には、すべての活動が学習活動とそれ以外に分けられる。これは、0〜1の数値を与えるとすると0か1にいずれかになるので、クリスプ(crisp、パリパリとした)概念による捉え方という。 それに対し、対象が0〜1の間のさまざまな値をとるとするのがファジィ概念で、その値が1に近ければ近いほど、その対象がその概念に属する度合いが高くなり、逆に0に近づけば低くなるとするのである。 ファジィ概念によると、生涯学習の場合には、多少でも学習性のある活動はすべて生涯学習に含めてしまい、範囲を限定する場合には、その学習性の度合い(0~1)によって、あるレベル以上(例えば0.6以上)の活動をレベル集合と捉え、それだけに限定することができる。この場合には、さまざまな活動に学習性についての調査を行い、学習性の度合いを確定する。 生涯学習の推進、振興、援助、支援をする際には学習性の低いものまでをも対象とすることはできないであろうから、地域(たとえば県、市町村)ごとに対象としてどこまでを生涯学習に入れるかというレベル集合の検討をする必要があろう。 たとえばある地域で住民調査を行い、日頃の自分たちの活動にどの程度の学習性があると考えているかを調べたところ、スポーツ活動、文化活動、ボランティア活動などは学習性の度合いが比較的高く、娯楽や旅行などは学習性の度合いが比較的低いという結果になったとしてみよう。行政がどこまでを支援の対象とすべきかが問題となった場合、レベル集合の考え方を使えば、学習性の度合いが比較的高いスポーツ活動、文化活動、ボランティア活動などは支援の対象とするが、娯楽や旅行などは支援の対象にはしない、とすることもできる。 生涯学習をファジィ概念でとらえたものに、平成2(1990)年の中央教育審議会答申『生涯学習の基盤整備について』がある。そこでは、「生涯学習は、学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、人々のスポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動などの中でも行われるものであること」とされている。 br> |
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参考文献 ・山本恒夫『21世紀生涯学習への招待』協同出版、平成13(2001)年 ・井内慶次郎監修、山本恒夫・浅井経子編著『生涯学習[答申]ハンドブック−目標、計画づくり、実践への活用』文憲堂、平成16(2004)年 |
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