生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習推進行政 (しょうがいがくしゅうすいしんぎょうせい)

キーワード : 生涯学習社会の構築、ネットワーク型行政、学習機会の提供、学習成果の活用、生涯学習のまちづくり
今野雅裕(こんのまさひろ)
3.現状と課題
  
 
 
 
  【行政体制】 
 国のレベルでの行政としては、各省庁がそれぞれの行政目的に即して、様々な学習機会の提供事業(厚生労働省の職業能力開発事業、社会福祉関連人材養成事業等)を行っているが、その中心は文部科学省(特に生涯学習政策局)で、生涯学習審議会(現在は中央教育審議会生涯学習分科会)での審議をもとに、関係省庁との連携を図りつつ、多様な施策の展開を図っている。
 地方自治体においては、生涯学習を主管する部課は教育委員会にあることが多いが、都道府県や大きな都市では首長部局に置かれるケースもある。いずれの場合も、生涯学習は自治体全体で対応する必要があり、関係部局の責任者が参加する総合的な生涯学習推進組織(本部長が知事など)を設置して、行政運営を行うところが多い。また、学識経験者、教育・学習団体関係者等からなる生涯学習審議会等の審議組織が設置されているところも少なくない。都道府県の多くで、また市町村でも半数を超えるところで、そうした審議組織を持っている。審議会等の審議を経て、生涯学習振興のための基本計画や基本構想等が策定されることも多い。
 また、都道府県では生涯学習の情報提供や学習相談、調査研究等を行う「生涯学習推進センター」の設置も進んでいる。市町村の中には「生涯学習のまち」宣言を行うところも多く、平成10(1998)年現在、137市町村となっている。さらに、生涯学習に熱心に取り組む144の市町村が「全国生涯学習市町村協議会」を設置し、全国的なネットワークを形成している。
【課題】  
1)目標達成の具体化・明確化
 生涯学習の用語自体がしばしばファジーなものと説明されるように、生涯にわたって自主的に行われる多様な学習活動の総称というばかりで、明確にイメージしにくいものとなっている。生涯学習振興行政の最終目標とする「生涯学習社会の構築」にあっても、ある程度具体的なイメージとそこに至る道筋をはっきりさせる必要もある。その時代その社会に応じた、より具体的で戦略的・現実的な行政目標を描いて、総合的で見通しの立つ行政を展開することが望まれる。
2)連携協力体制の実質化
 生涯学習を振興していくためには、生涯学習が広い内容を持っていることから、多くの行政機関が関わらざるを得ないが、それらの機関が単独に事業を展開するだけでは本来の生涯学習振興行政にはならない。総合的に社会全体を見渡して、全体的に企画・調整・実施する必要がある。生涯にわたる学習が、いつでも・誰でも・どこにいても容易に自由にできることが求められるから、学習機会や学習の場が学習者のニーズに応じてデザインされる必要がある。ところが現実には行政のセクショナリズムの通弊により、統合的な行政はなされていないことが多い。近年、文部科学省と各省庁との間で、子どもの育成に関係して関係省庁間で連携が行われているが、今後国・地方を問わず、行政全般にわたって連携・調整の方途が工夫される必要がある。
3)学習成果活用の促進
 「生涯学習社会の構築」というスローガンからも明らかなように、生涯学習振興行政の目標は生涯にわたる学習機会を確保することと、学習成果が社会的に評価・活用されるようにすることにある。これまで行政の力点は前者に置かれてきたが、今後は後者が緊要な課題となる。学習成果の認証、活用のシステム化、社会的評価の促進等が具体に構想され、施策化されなければならない。
 
 
 
  参考文献
・文部科学白書 各年度
 
 
 
 
  



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