登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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ここでいう伝統文化関連学習とは、茶道、華道、書道、短歌、俳句、香道などいわゆる伝統的なお稽古事のことを指す。今日、自治体・カルチャースクールにおける講座は、多くの一般市民が伝統文化関連学習を行う上で、学習にかかる費用が明確なこと、伝統的な家元制度特有の煩わしい師弟関係がないということなどから、最も気軽に門を叩ける機会となっている。しかし、そこには家元制度に裏付けられた流派・伝統芸能団体とは異なる様々な課題がある。 なお、自治体と企業のカルチャースクールとでは経営目的における手法に非営利性・営利性の違いがあり、本来的に運営目的は異なるのだが、カルチャースクールの多くも大手マスコミ系、私鉄・百貨店系などであり、営利を度外視した顧客サービスの一環として位置付けられているケースが多いため、自治体の講座とかなり近いと考えた。 まず、自治体・カルチャースクールと流派・伝統芸能団体との関係性についての課題がある。伝統芸能の講座において、その内容を学習していくためには、ある既存の流派と提携することが、必要となってくる。自治体の場合は地元に存在する流派などの団体に照会を行い、協力を得られるところから講師を招聘するようである。一方カルチャースクールの場合、スクールによって異なるが、基本的には学習者のニーズに合わせて必要な流派から講師を招いているという状況が見られた。 次に学習レベルと評価のしくみに関する課題である。自治体・カルチャースクールが主催する伝統芸能講座において行われている講座のレベルは初心者を対象にしたものが多く、学習レベルを深化させる意図を明確にしているケースは少ない。また、評価の基準も講座運営側が整備しているというよりも、講師個人の評価基準に任されている。学習者が学習レベルを深化させたいというニーズをもっている場合、講座運営側も個人の教授所に通うよう薦めている。講座期間を終え、次の段階に進みたいと希望する学習者に対しても同様である。その際、自治体にせよカルチャースクールにせよ講座の講師が自分の流派を薦めることについては黙認しているケースが多いが、目に余る勧誘があった場合は、注意を促すこともあるという。 さらに学習者・行政・流派を結ぶシステムづくりに関する課題である。近年の動きとして行政等が市民に対して場所を提供したり講師などの人材を招聘することを通して、今度は市民が自主的に伝統芸能の学習機会を手伝っていることがある。この場合、学習対象が伝統的なものであれ、現代的なものであれ、学習の中味や評価方法については行政側が関与しない方針が全国的に共通して見られている。 ごく普通の市民が伝統芸能の学習をはじめる上で、居住地域に密着している自治体の講座やカルチャースクールは入り口としてはきわめて重要な存在である。そして、さらに上級をめざす人々は、流派に入門するか、または自弁でサークルやグループを形成して学び始めるなどの選択肢がある。 br> |
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参考文献 ・山本恒夫「学習成果の評価と活用」(辻功・伊藤俊夫・吉川弘・山本恒夫編著『概説生涯学習』第一法規、平成3年) ・古市勝也「教養・ならい事の資格と免状」(『日本生涯教育学会年報第13号』、平成4年) ・丸山登「生涯学習における伝統文化関連学習の現状と課題〜自治体での講座を中心として〜」(『日本生涯教育学会年報第16号』、平成7年) |
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