生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

生涯学習推進体制 (しょうがいがくしゅうすいしんたいせい)

promotion system for lifelong learning
キーワード : 総合行政、連絡・調整機能、生涯学習振興法(略称)、生涯学習推進会議、生涯学習のまちづくり
井上講四(いのうえこうし)
1.意義・歴史的動向
  
 
 
 
  【意義】
 生涯学習推進体制とは、人々の生涯にわたる学習を支援、奨励するための、国、都道府県、市区町村の組織体制をいう。実際上は、都道府県、市区町村のそれを指す場合が多い。
 その具体的な目的は、生涯学習に関わる各種の事業の企画立案、学習環境の基盤ないし条件整備を行い、まさに「いつでも、どこでも、誰でも」が各自の学習に取り組めるようにすることである。ただし、その中心的な役割は、いわゆる「総合行政」として関連の事業や組織体間の連絡・調整機能を果たすことにある。ちなみに、そうした組織体制づくりの枠組みが予めあるわけではなく、各自治体によってかなりの相違がある。しかも、学習機会・場の提供は、教育行政における社会教育・学校教育のみならず、一般行政や民間でも行われており、現実には社会教育行政の取り組みを中心としながらも、多種多様な態様がある。いずれにしても、生涯学習推進体制の整備は学歴社会の弊害を是正し、生涯学習社会を建設するための方策として、きわめて重要な意味をもつことはいうまでもない。 
【歴史的動向】
 こうした組織体制づくりは当初都道府県レベルで顕著となり、秋田県や兵庫県のように、1960年代の後半から取り組み始めたところもある。しかし、それへの取り組みが本格化したのは昭和56(1981)年の中教審答申「生涯教育について」の中で、関係機関の連携・協力の促進が生涯学習のための条件整備の課題としてあげられてからである。その後、昭和59(1984)〜62(1987)年の臨教審答申で「生涯学習体系への移行」が前面に押し出され、その中で推進体制に関わる提言がなされたことにより、全国的に波及していった。この臨教審答申の影響は甚大で、国レベルにおいては社会教育局の改組・再編、法体制の整備、文部省と各省庁間の連携・協力が推進され、それに伴い地方の推進体制整備にも一段と拍車がかかった。
 その後、平成2(1990)年の中教審答申「生涯学習の基盤整備について」で、国、都道府県、市区町村に連絡調整組織を置く必要性が改めて強調された。こうした推進体制づくりにとって重要な契機となったのは、これを受けた平成2(1990)年の「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」の制定である。これは生涯学習の基本法ではなく、早急に講ずるべき施策についてのものであったが、この法律では主に都道府県教委の事業、生涯学習審議会、地域生涯学習振興基本構想が取り扱われ、都道府県教委の事業では学習機会の提供、学習機会に関する情報の収集・整理・提供、学習需要等に関する調査研究、指導者等の研修、関係機関・団体への支援等が規定された。生涯学習審議会については、国レベルにそれを置くこと、都道府県には、条例により置くことができること、市区町村では、そうした提案はなかったが、地域生涯学習振興基本構想が打ち出され、都道府県が特定の地区において民間事業者の能力を活用しつつ、学習機会の総合的な提供を行うことに関する基本的な構想を作成することができるとされた。これらを受けて、都道府県、市区町村レベルでは推進・連絡・調整機構を設置するところが増えていった。なお、こうした推進体制づくりは、文部省(当時)の補助事業「生涯学習のまちづくり」推進事業(昭和63(1988)年度〜平成10(1998)年度)の取り組みによるところが大きかった。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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