生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年7月27日
 
 

カルチャーセンターにおける事業計画・立案 (かるちゃーせんたーにおけるじぎょうけいかく・りつあん)

キーワード : カルチャーセンター、生涯学習施設、講座の企画・立案、公設民営方式、学習歴
秋山豊(あきやまゆたか)
1.歴史的背景とその役割および社会的意義
  
 
 
 
  【カルチャーセンターの歴史的背景】
 カルチャーセンターは、昭和55(1980)年頃に、マスコミ(新聞、テレビ)、私鉄電鉄、デパートなどの流通業界などの各業界大手が参入を果たしたことで、今日では広く生涯学習施設としてのカルチャーセンターが確立したともいえる。
 昭和30(1955)年、東京・大手町の産経会館に産経学園が誕生したのが、わが国最初の民間教育文化施設であるといわれており、戦前、わが国最初の「婦人のための教養クラブ」としていた東京婦人会館を、戦後の新しい時代の要求に応えるため、新しい女性のためのクラブ組織として開設された。
 その後、昭和32(1957)年には、三宮・神戸新聞会館に神戸新聞文化センターが開設され、昭和49(1974)年には、東京・西新宿の住友ビル内に朝日カルチャーセンター、昭和53(1978)年には、東京・青山のツインビルにNHK文化センター、昭和56(1981)年には、千葉・船橋のショッピングセンターに読売・日本テレビ文化センターなどが相次いで開設し、本格的なカルチャー時代の到来となった。
【カルチャーセンターの語源】
 今日、広く一般的に使用されている“カルチャーセンター”という言葉は、昭和49(1974)年の朝日カルチャーセンターの開設と同時にわが国で初めて使用され、開設時の統一テーマは『日本にない、大人向けの大学を作ろう』というものであった。
 お稽古事としての個人教室という概念であった生涯学習活動は、昭和56(1981)年の中央教育審議会においてわが国で初めて「生涯学習」という概念が提唱されたことにより、このカルチャーセンターという民間教育文化事業施設が広く一般市民にも浸透したといえる。
【公民館とカルチャーセンターの相違点】
 小学校区または中学校区などの日常生活圏域に根ざした活動を行う公民館においては、その地域住民に文化的でかつ教育的な公的サービスを提供(奉仕)することを主な目的としており、その料金は安価もしくは無料であるところがその特徴でもある。
 しかし、カルチャーセンターの設置基準や運営主体は、各企業の判断(営利)によるところが大きいため、比較的立地条件の良い駅前至近のビルや駅直結のビル等に開設している場合が多い。
 昨今においてはカルチャーセンターが保有していた独自性や魅力ある講座が、公的施設である公民館や大学公開講座などでも開講されており、『公民館のカルチュア・センター化傾向』が叫ばれている。カルチャーセンターと同等もしくは類似した講座内容を、より安価な価格で講座運営しているのも事実である。
【カルチャーセンターと生涯学習センター】
 カルチャーセンターの経営主体は上述したとおり、マスコミ、私鉄電鉄会社、流通業界などが経営主体となっており、顧客である受講生数を確保できない企業は、必然的に安定した運営をすることが困難である。
 新しい時代の、新しい生涯学習体系への移行に伴い、今日では全国各地に公立の生涯学習センターが相次いで開設し、また、国公私立大学・短大の公開講座やオープンカレッジ、エクステンションセンターなどでも多岐にわたる内容で講座が開講され運営されている。このような類似施設が地域に点在することは、多様な学習ニーズに応えているといえる半面で、学習者の奪い合いを引き起こしているのも事実である。
 
 
 
  参考文献
・山本思外里著『大人たちの学校 生涯学習を愉しむ』、中公新書、平成13(2001)年
・松下圭一著『社会教育の終焉[新版]』、公人の友社、平成15(2003)年
・井手聡・犬塚義人著『はじめよう!カルチャー教室』、同文館出版、平成16(2004)年
・蛭田道春編著『生涯学習支援の計画づくり』日常出版、平成17(2005)年
 
 
 
 
  



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