生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

青年期の理解と学習 (せいねんきのりかいとがくしゅう)

understandings and learning of adolescence
キーワード : 青年期、発達課題、自我同一性の危機、男女共同参画社会づくり、青年期の学習内容
加藤千佐子(かとうちさこ)
2.青年期の発達課題
 
 
 
 
  (1)ハヴィガ−ストの青年期の発達課題
 ハヴィガ−スト(Havighurst,R,J.1953)は、人間が社会的存在であるゆえに,各発達段階(developmental stage)に応じて、社会が期待する発達課題(developmental task)があることを強調した。ハヴィガ−ストは各年齢段階を乳幼児期、児童期,青年期、成人前期、成人中・後期、老年期に分け、これらの人生の各段階で発達課題を6〜10項目あげている。それらはa.身体的成熟に関するもの(歩行の学習)、b.社会・文化により規定されるもの(社会参加の学習)、c.自我や人格に関するもの(価値観や人生観の学習)等の3分野である。ハヴィガースト(1958)の青年期の発達課題は以下の10項目である。
・両性の同年輩の仲間と新しい、より成熟した関係をもつこと
・男性的ないし女性的な社会的役割を達成すること
・自分の体格を受け入れ、身体を効率的に使用すること
・両親やその他の大人から感情的独立を達成すること
・経済的独立の自信を達成すること
・職業を選択し、準備すること
・結婚と家庭生活の準備をすること
・公民的資質として必要な知的技術と概念とを発達させること
・社会的に責任ある行動を望み、それができるようになること
・行動を導くものとして価値観および倫理体系を獲得すること
(2)エリクソンの青年期の自我同一性の危機
 エリクソン(Erikson,E.H.1959)は、人間の発達を身体的・精神的・社会的・歴史的存在としてとらえ、自我の確立・統合を重視した発達理論を構築した。人生周期(ライフサイクル)を8段階に分け、その時期ごとの課題を未解決にすると、社会的適応に失敗し、不安定感がつのり問題行動が現れると説く。
 エリクソンの心理社会的発達図式では、縦軸にフロイトの精神分析的発達段階説(リビドー理論)から援用した8つの生活周期の区分を表し、それぞれの周期に成熟し克服すべき発達課題を示した。フロイトの8段階は、口唇感覚期、筋肉肛門期、移動性器期、潜在期、思春期と青年期、前成人期、成人期、老年期である。
 エリクソンは各発達段階で克服すべき課題を危機(crisis)と呼び、課題の項目と危機的項目の対立する2つの項目を提示した。8つの発達課題と危機的項目は、基本的信頼対不信、自律対恥と疑惑、自発性対罪悪感、勤勉対劣等感、同一性対役割混乱、親密さ対孤独、生殖性対停滞、自我の統合対絶望である。
 青年期の自我同一性の危機(identity crisis)についてエリクソンは、青年期に自我と社会との相互関係の中で生起する心理・社会的危機の克服次第で、自己を確立していけるか(アイデンティティ達成)、あるいは自らを見失い混乱を招くか(アイデンティティ拡散・混乱)であるという。青年期は仲間との付き合い、進学、就職、異性との関係、結婚、さらには人生観・価値観形成に至るまで、人生岐路に立たされた自己判断、自己決定が求められるのである。


 
 
 
  参考文献
・エリクソン,E.H.(1950)、仁科弥生訳『幼児と社会(1・2)』みすず書房、1977/1980
・エリクソン,E.H.(1959)、小此木啓吾訳『自我同一性〜アイデンティティとライフサイクル〜』誠信書房、1973
・ハヴィガ-スト,R,J(1953)、荘司雅子訳『人間の発達と教育』牧書店、1958
 
 
 
 
 



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