登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【大学開放の目的】 大学開放は、大学の人的・物的資源並びに教育・研究機能を社会に開放し、市民の大学レベルの学習ニーズにこたえると共に、知識・技能・態度の向上を通じて、自ら社会変化に適応する諸能力を養うことを目的としている。また、その営みを通じて、政治経済的革新、社会倫理的改善に寄与するものである。わが国においては、公開講座を主要な学習形態とするが、学部等の授業を一般に開放するケースも増えている。科目等履修生制度のように、単位を授与する形態もあるが、一般にはノン・クレジットである場合が多い。大学教員は、通常はそうした事業に講師としてかかわるが、学外の人材を登用して、多様化・高度化する学習ニーズに対応する大学も多い。ここでは、公開講座を中心として、大学開放と教員の関係を記述する。 【動向と課題】 公開講座を担当する現役教員(延)の割合は、講師全体の67パーセントであり、大学教員全体のほぼ10パーセントに相当する。このデータは、徳島大学における平成13年度の統計であるが、学部によって教員の貢献度には大きな差異がある。ある学部は26パーセントである一方、1パーセントに満たない学部も複数ある。一般に、大学開放を進める学内組織として生涯学習教育研究センターのようなセンター方式をとる大学では、各学部から選出された運営委員の組織である運営委員会が企画・運営の最終的責任を有している。公開講座の企画については、担当数を各学部に割り当てたり、全学的な担当希望調査や受講者ニーズ調査、更には学内シラバス調査などを踏まえて開講講座を選定・企画したりするケースがあり、その実態は大学によって異なっている。前述のデータは、後者の例であるが、企画方式の違いによって、並びに設定講座数の多寡によって、教員の参画度が異なってくることに注意する必要がある。 問題は、教員個々の意識にきわめて大きな落差が存することである。ある教員は、大学開放に熱心に参加するが、他の教員は全く関心がないといった現実は、どの大学でも直面する矛盾である。公開講座に関して講師となる意欲があるかどうかを尋ねた調査では、「是非やりたい」教員は5パーセントに満たず、「やってみてもよい」を合わせても、44パーセント程度に留まっている。これに対して、「全くやりたくない」が11パーセント、「あまりやりたくない」が25パーセントであった。講師として参画したくない理由は、「研究テーマが講座に向かない」「授業・診療が忙しい」「研究時間をとられたくない」が上位を占め、この3つだけで全体の7割弱を占めている。別の質問では、公開講座は「教育・研究活動の妨げにならない範囲で取り組むべき」であるとする意見が全体の四分の三を占めた。これらのデータは、大学教員の大学開放に対する意識の在り処を象徴している。 社会貢献が、教育・研究に次ぐ大学の基本機能(「第三の使命」)であるという認識は、ここ数年における大学評価の進行過程で顕著に高まってきた。しかし、その場合でも、研究活動による社会還元や知的財産事業による貢献が関心の大部分を占め、公開講座を中心とした大学開放事業への関心はほとんど高まっていないというのが現実である。 br> |
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参考文献 ・小池源吾「生涯学習社会における大学」鈴木・佐々木編『社会教育と学校 シリーズ生涯学習社会における社会教育』学文社、2003年 ・『徳島大学大学開放実践センター年報 平成13(2001)年度』徳島大学大学開放実践センター、2002年 ・廣渡修一『大学開放に関する徳島大学・短期大学部教官のアンケート調査報告書』徳島大学大学開放実践センター、1993年 |
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