生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年12月4日
 
 

中国・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会 (ちゅうごく・しこく・きゅうしゅうちくしょうがいがくしゅうじっせんけんきゅうこうりゅうかい)

Kyushu Branch Lifelong Learning Convention
キーワード : 実践と研究の交流システム、実行委員会方式、福岡県立社会教育総合センター、モデル的実践事例、人的情報ネットワーク
大島まな(おおしままな)
3.実践研究交流会の社会的機能
  
 
 
 
  【実践者と研究者の研修の場】
 交流会は参加者にとって学習の場であり研修の場である。実践者にとっては、日々の仕事の意味を問い直し、方法論を確認する機会である。具体的な課題に対して、使えるアイデアや解決のためのヒントに出会うことができる。研究者にとっては、実践を通して理論を検証しつつ研究の価値を確かめる機会となる。
 そのためには、参加者自身の問題意識が前提である。「何かを掴み取って帰ろう」という意欲に満ち、問題意識を共有する者同士の集まりは、集団の雰囲気そのものも学習環境として大きな要素を成している。
【人的ネットワーク・情報ネットワークの深化拡大】
 「交流会」という名の通り、人的交流、情報交流に重きを置いている。懇親会や休憩時間を活用して、多様な参加者の中で名刺が行き交う。実践事例という材料があるので、話が具体的に進む。人との出会いは人材の発見でもある。後日、各所で人と人がつながって新事業に発展している例、他所からもらったアイデアを応用して事業展開している例は少なくない。実行委員や事務局スタッフは、そのために意識して人と人とをつなぐ仲人役を果たしている。意欲とアイデアの連鎖は、新たな実践を生み出す原動力となっている。
【実践の社会的承認】
 現場の実践者にとって、自分の担当する事業が取り上げられ、発表の場を与えられ、人々に評価されるという機会は少ない。このような機会を経て、自分が行ってきたことの意義を改めて見出し、明日からも頑張ろうという意欲が湧く。すなわち、苦労した実践が社会的に承認されることによって、次の取り組みへの活力が与えられるのである。多くの発表者は、自分の地域で必要だからやってきた「日常のこと」が皆に注目されるほどのことなのだろうか、と謙虚で遠慮がちである。それが、発表を通して評価されることによって、自分の仕事の価値を確認することができる。発表はしなくても、同じような取り組みをしている実践者が発表者に共感し、苦労を共有することによって評価を自分に重ねることもあろう。この「社会的承認」は実践者を交流会に惹きつける吸引力の一つと考えられる。
【生涯学習の概念付与】
 各事例の発表者は、自分の取り組んできたことが「生涯学習に関連している」という認識を持っていない場合が多かった。人生の各期に生活のあらゆる領域において行われる学習は、あらゆる分野・領域の活動を含む。教育分野以外の事例も当然入る。交流会のプログラムにはそのような多様な事例が集合している。そのことによって、それが生涯学習活動であるという視点を発表者にも参加者にも与えることになった。
 初めから生涯学習活動があったのではなく、さまざまな活動が生涯学習の概念の下に発掘されたことによって、生涯学習活動として認知され、整理されたといえる。交流会は、発表事例を生涯学習の観点から意味づけ、発表事例の豊富化が生涯学習の概念を膨らませるという「概念付与」の循環を辿ってきたのである。生涯学習の総合性は、交流会の参加者と事例の多様性によって証明されている。
 
 
 
  参考文献
三浦清一郎編著『市民の参画と地域活力の創造−生涯学習立国論−』学文社、2006年
大島まな「理論を生かし実践から学ぶ『生涯学習実践研究交流会』システムの成果−九州支部大会25周年の意味−」日本生涯教育学会年報第27号、2006年
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.