生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年11月23日
 
 

高校生の子ども劇場活動 (こうこうせいのこどもげきじょうかつどう)

キーワード : ボランティア、世代間連鎖、正統的周辺参加、ライフイベント、身体表現
林幸克(はやしゆきよし)
2.高校生の活動を促進するための要件
 
 
 
 
  1)学びの世代間連鎖
 子ども劇場で活動に取り組んでいる高校生は、最初からその中核を担って活動を展開しているわけではない。正統的周辺参加を経ながら、誰に教えを請うわけでもなく、自然と自分のできること、自分がするべきことを体得している。また、その学びの過程で、高校生という同世代の中で、上級生から下級生へと円滑な活動運営のコツや意見を集約して合意形成するポイント、居心地のいい雰囲気づくりなどを無意図的に伝授している。地域NPOという組織全体の中で捉えると、高校生世代は、その少し上の20代を中心とした青年世代の中に、また、学校の教師でも保護者でもない大人世代の中に、憧れとなる存在、「意味ある他者」の姿をみて学んでいる。それと同時に、中学生・小学生世代へも、高校生自身が知らず知らずのうちに彼らの憧れの存在となることによって、影響を与えている。同世代間、異世代間の中でそれぞれに学びの循環があり、連鎖しながら世代間が繋がっている。
 高校生が、身近に、自分にとってモデルとなるような「意味ある他者」を身近に発見することができるように、学校や地域社会において、老若男女、様々な人々と出会う機会を設けることが求められる。また学校教育的な「教える・教えられる」という関係ではなく、無意識のうちに主体的な学びが進行し、気がついた時にはその活動の中核になっているような働きかけが必要である。
2)魅力あるライフイベント
 発達段階に応じた適時性のあるライフイベントを意図的に設定することが重要になる。様々なライフイベントを経験することで楽しさを体感し、また、同じライフイベントでも、発達段階に伴って担うべき役割が異なり、その役割を遂行する過程で後継者育成の楽しさを実感することもある。魅力あるライフイベントを通して、楽しさの質が変容していくはずである。受動的に、与えられたものを受け入れ、体験していく中で感じる楽しさが、徐々に、自分自身が楽しさを提供する、あるいは発掘する立場になり、他者に対して能動的に働きかけ楽しさを共有する段階になる。いつまででも高校生でいられるわけではないため、そのノウハウなどを後進に伝承していくという側面も重要になる。
 学校教育の中では、意図的・組織的な学習が展開されるため、そこにあるのは、他から与えられた「楽しさ」である場合が多いが、そこからの脱却を図り、自らが創り出す楽しさを重視することが求められる。非学校性に基づく正統的周辺参加ができるとインパクトは大きい。学校教育においては子どもの安全・安心を大切にすることは重要であるが、間違いや失敗、危険を過度に回避しようとすることは、マニュアル通りにやれば誰でもできる、魅力に乏しい活動の提供に終始しかねない。多少の危険や未知なる部分があっても、それまでの経験をつなぎ合わせて、独自のものを創り出していくという体験が必要である。
 
 
 
  参考文献
林幸克「高校生のボランティア学習に関する実践環境の検討」日本生涯教育学会論集・28、2007年
林幸克「地域社会でボランティア学習に取り組む高校生の意識・実態」名古屋学院大学論集社会科学篇第43号第3巻、2007年
 
 
 
 
 



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