登録/更新年月日:2008(平成20)年11月14日 |
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(1)共同事業と研修 社会教育主事は、社会教育法において「社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える」とされている。また、教育公務員特例法においては、専門的教育職員と規定されている。今日のような変化の激しい社会状況下において、社会教育行政がその役割を果たす上で、これまで以上に社会教育主事へ寄せる期待は大きい。しかしながら、社会教育主事としての専門性や実践力を高めるために、職場を離れて指導者対象の研修会等へ参加することは、自治体の財政状況を勘案すると以前のように容易なことではない。このように集合研修への参加が難しい状況である以上、日々の実践の中で専門性を高めていくような方策を選択しなければならない。特設した集合型研修から日々の事業実践の中で専門性を高める実践型研修を考えるべきである。しかし、単一市町村では、以前のように社会教育担当課が数名のチームとなって事業にあたる時代ではなく、一人の社会教育主事が企画から実施運営まで担当しなければならないという状況では、相互に切磋琢磨して日々の実践の中で専門性を高めていくことはできない。 そこで、異なる市町村の社会教育関係職員が共同で企画・運営にあたる「社会教育共同事業」を実践の場として位置づけることが考えられる。これまでも近隣市町村の社会教育関係職員が連携・協力し、共同で企画・運営に当たる社会教育事業の実践は報告されてきた。北海道の実践事例では、参画した市町村社会教育職員のアンケートから研修としての効果も確認できた。特に、経験の浅い社会教育主事にとっては、実践の中でベテラン社会教育主事から事業の企画・運営のノウハウを学ぶことのできる貴重な研修機会となっている。 (2)共同事業の効果 北海道で実施されている社会教育共同事業について、コスト削減や効率性という視点からの類型化を試みたところ、共同実施によって、大きな成果を挙げている事例が数多くあることが明らかとなっている。また、一方では、コスト削減や効率性だけではなく、参加者の広域的な交流促進についての効果も期待されている。近年、少子化により、地域における子どもの数が減少する中、これまでのように地域社会の中で、子ども同士が、切磋琢磨し社会性を育みながら成長していくということが困難となっている。同年齢や異年齢の子どもたちが社会集団を構成することができないということは、コミュニケーション能力や社会的スキルの低下など、子どもの社会性の形成を一層難しくしている。こうした憂慮すべき状況に、市町村の垣根を超え広域的なエリアの子どもたちが交流できる共同事業は、貴重な機会となる。 社会教育共同事業が、社会教育関係職員の実践力を高める研修機会としての可能性について示したが、共同事業は学習者の広域的な交流や効率的な事業の実施等を目的として実施するものであり、職員の研修がこれらに優先されるものではない。あくまでも、職員への研修効果は付随して得られるものであり、連携・ネットワークを効果的に活用し事業展開する共同事業が、学習者にとっても多くのメリットがあるものでなければ、実施への理解は得られない。 社会教育行政職員の研修に対する予算計上が難しい以上、特設した集合型研修から日々の事業実践の中で専門性を高める実践型研修の機会として、近隣市町村が連携した共同事業を積極的に実施すべきであろう。 br> |
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参考文献 ・ 「連携・ネットワークによる効率的な社会教育行政の推進−北海道におけるコストリダクション事業の類型−」社会教育(財)全日本社会教育連合会、第62巻1月号、2007年 |
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