登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
保護者の学校参加と一口に言っても、そこには(a)学校経営や学校評価への参加、(b)ゲストティーチャーや授業のアシスタントなど授業への関わり、(c)部活動や放課後における子どもとの関わり、(d)パトロールや環境整備、チャリティー活動への参加、など様々な活動の形態が含まれる。 これまで各地域では、保護者によるPTA活動や、地域での安全パトロール活動や清掃活動などを通じて、学校の教育活動の周辺的な部分への支援が行われてきた。 2000年代に入ると、これらの活動に加えて、学校のより中核的な部分についても保護者や地域住民に関わりを求める制度・事業の整備が進んだ。例えば、学校評議員(平成12(2000)年)や学校運営協議会(平成16(2004)年)という制度は、学校経営への参加を求めるものである。また、放課後子どもプラン(平成19(2007)年)や学校支援地域本部事業(平成20(2008)年)では、保護者・地域住民にボランティアとして学校の教育活動や放課後の活動への関わりを求めている。これらの一連の動きは、従来の教職員を中心とした学校経営・教育活動に対し、多様な主体の参加と協働による「学校ガバナンス」や「開かれた学校」づくりを推進する目的を持つ。 これらの制度・事業が導入されることで、保護者は従来よりも容易かつ多面的に学校に関わることができるようになった。ただし、保護者を取り巻く状況は多様で、参加のしやすさはそれぞれ異なることに留意が必要である。例えば日本では、学校に関わる活動への参加は、父親よりも母親の方が多いとされるが(佐藤2009)、このことは活動内容に一定の制約を与えている。また、一部の保護者に参加が偏ることで、保護者の意思が学校経営や教育活動に適切に反映されなかったり、特定の保護者に負担が集中することも考えられる。ここから、どのような保護者が参加しやすく、参加しにくいのかを明らかにし、参加しにくい層への支援や働きかけのあり方を検討することが必要である。 近年進められている保護者セグメント研究では、保護者をその属性から幾つかの類型に分け、各類型の行動パターンや構成要因を明らかにすることが試みられている。この中から、保護者の学歴や就労状況、世帯収入、ライフスタイルなどが学校参加に影響することが明らかになってきた。また、英米圏では質的な研究を通じて、各家庭の社会関係資本や文化資本が学校参加に与える影響が明らかにされてきた(Lareau2000など)。 これらの社会・経済的状況だけでなく、主観的な認識や価値観も学校参加に影響を与えている。例えば、保護者の教育認識や、学校・教職員への信頼は学校参加の意思を大きく左右する。これらの認識が、どのような経路を通じて形成されるのかが注目される。これまでの学校との関係や、マスメディアの情報、保護者同士のネットワーク、家庭内の会話などの要因の影響力を検討してみる必要がある。 ここに挙げたような客観的、主観的要因の持つ効果が、参加の形態によって異なる可能性もある。学校参加をひとくくりに論じるのではなく、各形態の規定要因を詳細に検討し、参加を高める具体的方策を検討する必要がある。 保護者の学校参加が求められる現在だからこそ、保護者の多様性に目を向け、参加を高めるような働きかけや支援を含んだ、学校参加のあり方を考えることが重要となる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 ・ Lareau, A.(2000)Home Advantage:Social Class and Parental Intervention in Elementary Education, Rowman & Littlefield(2nd ed). ・ 佐藤香(2009)「余暇活動の国際比較」連合総合生活開発研究所編『生活時間の国際比較:日・米・仏・韓のカップル調査』pp.133-148. |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |