登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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文化行政とは、一般に国・地方公共団体の文化に関わる施策の総体を指すが、広義には独立行政法人等の文化に関わる施策及び事業もこれに含まれる。1980年代の末までは、文化は多元的な価値を内包するため、内容に関わる理念や目的・目標の部分は空白とし、実務的な対応を中心とした“行政”の呼称が適当と考えられていた。しかし、1990年代以降、文化振興の領域へのメセナの名による民間部門の参画によって、文化芸術団体・国(地方公共団体)・民間企業等三者の相互連携による新たな枠組みの構築が必要となったこと、地域にあっては地域文化の振興が“まちづくり”の中核に位置付けられ、地域政策の諸側面が理念的に文化政策に収斂していったことなどから、社会、経済との関係を見据えたより高次の“政策”として把握する必要があるとの認識が一般化し、今日では文化行政に代わり文化政策の語が多く用いられている。 かつて、行政組織の上では、文化に関わる事項は社会教育の範疇でとらえられていた。これらが文化行政の対象となったのは、文化庁の設置(1968年)により、地方公共団体でも文化課が社会教育課から独立していく1970年代以降のことである。一方、社会教育の主力は公民館を中心とする活動に置かれ、文化に関わる事項は社会教育の周辺事項とされる傾向にあり、文化行政の社会行政からの分離独立は、社会教育からさらに文化を遠のかせていった。 しかし、1990年に制定された「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(生涯学習振興法)は、生涯学習の対象として、学校教育、社会教育と並んで文化活動を主たる分野に含め、文化に関する機関及び団体との連携、文化活動の機会や情報の提供等を具体的な内容として掲げた(第3条、第5条)。これにより、生涯学習は、学校教育、社会教育、文化活動のすべてを含むものとして観念されるようになった。従って、今日では、あらゆる学習活動が生涯学習の名の下に包括され、文化活動も生涯学習の中に明確な位置を占めるに至ったといえる。 一方、教育基本法は、教育も文化の一環であるとともに、人格の完成を目指す教育は文化の創造者の育成に通ずるとの認識の下に、教育と文化を統一的にとらえようとしている(前文)。従って、生涯学習に関わる行政は、このことを踏まえた上で、国民個々人が生涯にわたって自主的に学習し、文化の創造に参加できる条件の整備を図ることにある。また、社会教育法も、国民の文化的教養を高め(第3条)、音楽、演劇、美術等の芸術の発表会を開催し、奨励すること(第5条第11号)を謳っている。その意味で、社会教育においても、文化は本来その対象の一部をなしていたといえる。 実体的に見ても、国民の文化活動の多くの部分は、生涯学習活動ないし社会教育活動と重なっている。これまでの文化行政と生涯学習(社会教育を含む)行政の乖離を埋め、今後は、両者が相互に強い連携を保って推進されていく必要がある。 br> |
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参考文献 根木昭『日本の文化政策−「文化政策学」の構築に向けて−』剄草書房、2001年 根木昭『芸術文化政策II−政策形成とマネージメント−』放送大学教育振興会、2002年 根木昭『文化政策の法的基盤−文化芸術振興基本法と文化振興条例−』水曜社、2003年 根木昭『文化行政法の展開−文化行政の一般法原理−』水曜社、2005年 |
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