生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月31日
 
 

研究課題・国公立社会教育施設の経営方式 (けんきゅうかだい・こっこうりつしゃかいきょういくしせつのけいえいほうしき)

キーワード : 経営の外部化、(地方)独立行政法人制度、PFI、指定管理者制度、必要課題
井上伸良(いのうえのぶよし)
2.経営の外部化に関する諸制度と社会教育施設経営
  
 
 
 
   独立行政法人・地方独立行政法人制度は、行政事務を効率的・効果的に実施するために、事務の執行部門を行政とは別個の法人である独立行政法人あるいは地方独立行政法人として切り離し、行政からの運営費交付金などによって経営をおこなうものである。事業の執行部門を分離して企業会計を原則とすることで経営効率の向上を意図している。PFIは、社会教育施設の経営のみでなく、設計・建設まで、任せて効果があがるものはできるだけ民間に委ねる手法であり、事業遂行上のリスク(建築工事完成の遅延や施設の損傷、天災による被害など)について詳細な契約をとりかわして官民のリスク分担を予め明確にすることで、それまでの公共事業や第三セクター方式の欠陥を克服する手法となっている(施設の所有や設計・建設・経営に要する費用負担の形態は一律ではない)。指定管理者制度は、地方公共団体が指定するもの(指定管理者)に公の施設の管理を行わせるものである。それまでの管理委託制度(1963(昭和38)年地方自治法改正時に創設、2003(平成15)年同法改正、施行により廃止)に比べて社会教育施設の管理を行うことができる主体の対象が拡大して、管理委託制度において対象ではなかった公共団体・公共的団体以外の団体や民間事業者も指定管理者になることが可能になったことから、施設経営に多様な可能性をもたらすものとなっている。行政による経営と比較した場合、経営の外部化をもたらすこれらの制度は、柔軟な事業運営や予算編成が可能であることや経営の合理化が期待できることにその特性があるものの、議会のコントロールが及びにくいこと、非採算事業が軽視される可能性も考えられること、事業の継続性が保障されていないことなどへの配慮が課題として考えられる。
 社会教育施設を利用する側の立場からすれば、提供されるサービスやコストに明らかな不満を覚えない限り、どの主体が経営しているかは余り問題にならないであろうし、利用者のニーズに応える事業について低コストで良質なものが提供されればよいと考えるかも知れない。しかしながら、社会教育施設は、要求課題のみでなく、必要課題に関する事業を企画・実施することも役割として期待されていると考えるならば、利用者の顕在的なニーズへの対応のみで社会教育施設の経営方式を選択し、評価することは好ましくない。社会教育施設が果たしているさまざまな機能を適切に評価する方法を考案することが実務的な次元における課題であるといえよう。

 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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