生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年11月30日
 
 

自然体験活動が少年の情意面に与える影響 (しぜんたいけんかつどうがしょうねんのじょういめんにあたえるえいきょう)

The influence of activities in the nature on the sympathy thought of children
キーワード : 自然体験活動、情意、いのちの大切さ、感性、達成意欲
渋谷健治(しぶやけんじ)
2.自然体験活動が少年の情意面に与える影響
  
 
 
 
   自然体験活動が少年に与える影響を調査するため、8泊9日の自然体験プログラムに参加した小学5・6年生(51名)とこれらに参加しない小学5・6年生(104名)から質問紙法により得たデータをもとに、心理統計に基づく結果の分析を行った。結果は、自然体験プログラム終了後に参加者の「いのちの大切さ」「自然に対する感性」「達成意欲」に向上が見られた。参加少年の事後の感想文の引用も交えて考察する。
【いのちの大切さ】
 自然体験活動は、多様な自然環境の中で展開されることから、自然の持つ不可思議さや生き物の生命力を実感する場面が多い。また、自然体験活動は、仲間と関係性を築きながら寝食を共にする集団宿泊活動の形態で実施されることが多いことから、自分に対する自信の獲得や多くに支えられながら生きていることを感得する機会となる。こうした生き物との触れ合いや生命力の実感、自分への自信などが命に対する意識の向上と自尊感情の高まりをもたらしたと考えられる。
 少年の感想:「たくさんの人に支えられてやりとげられた」「カブトムシの生命力に気づいた」
【自然に対する感性】
 刻々と変化する自然の多様な営み、現象に直接的に触れ合いながらの自然体験活動は、ふだんの教室とは異なる開放的な空間であり、多くの少年にとっては魅力的な未知の世界でもある。予測不能な不可思議な事象等から興味・関心が引き起こされ、そこから五感を通した発見や気づきをもたらし、自然に対する感性を高めたと考えられる。
 少年の感想:「川の冷たさに感動した」「見たこともない花におどろいた」
【達成意欲】
 集団やグループでなされる自然体験活動は、達成目標の実現に向けて不安や多くの困難に立ち向かいながら、これらを一人ひとりが克服していく過程を経る。親元を離れての集団生活は、仲間に受け入れられたい、仲良く活動したいという対人的欲求をはじめ、活動に対する成功可能性と見通しなど内発的な動機付けをもたらす。こうした欲求を日々克服しながらなされる成功体験や情動体験などが少年の達成意欲を高めたと考えられる。
 少年の感想:「最後まで歩ききった」「目標を達成しようと一日一日を努力した」
 一方、参加者のうち、ふだんの遊びや自然の中での活動経験が多い者と少ない者の比較では、いずれもふだんの遊びや活動経験が多い参加少年の方が、「いのちの大切さ」「自然に対する感性」「達成意欲」で変容を示した。
 このことは、ふだんの体験活動や遊びの量が多い少年達は、これらの少ない少年達と比較して活動的であること、自然や自然の変化を肯定的に受容できること、様々な人との関わりを通した社会的スキルに習熟していることなどがその影響として示唆される。また、体験活動の多い少年達は、過去の成功体験や情動体験が内発的な動機付けとなり、達成意欲の変化をもたらしたと考えられる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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