登録/更新年月日:2013(平成25)年11月22日 |
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「女性のための学びのひろば」は、受講生の顕在的需要が高く趣味的傾向に偏った従来の公民館講座の脱マンネリズムに駆り立てられた筆者が平成24(2012)年3月に自ら立ち上げた住民主導の生涯学習講座である。この講座では学習需要が少なくても、社会的な観点から学ぶ必要があるとおもわれる現代社会の特質や課題を学習する「発展的生涯学習」を目ざしており、学習意欲のある女性の育成に貢献できればと願っている。地域社会への帰属意識やつながりが希薄化している現代社会において、同じ時間と場所を共有できる新しい形の社会関係構築の「場」は今後ますます必要となるであろうと思われる。目的は「場」の創出であるが、何らかの講座に参加しそこに場が形成される行政主導の講座提供型ではなく、「場の形成」を意図した「新しい公共の創造」を目的とした、個人による自発的なコミュニティづくりのための生涯学習講座である。 講座の理念は「社会的な内容の学習の継続は学習者自身ばかりでなく周囲の人びとにも影響を及ぼし、この波及効果は個から集団(社会)へと伝播していき、ひいては次世代の人びとによりよい社会を引き継いでいく一助になる」であり、アンソニー・ギディンズの「これからの時代においては、生涯にわたって学習を継続し、変化する社会への認識を高め、個々人が主体的に社会に参画していくことが求められており、その生き方の選択・決定はグローバルなことがらに影響する」理論に基づいている。 これまでに5回実施しているが、参加者は20代から80代までの女性で毎回およそ30名の出席である。知的好奇心や社会への関心が高い受講生が多数を占めていることはこの講座の特徴である。本講座は住民主導の自主講座であるが公共性・教育的意義を高めるため、宮崎県教育委員会の後援を得ており、地方新聞、ラジオ局での告知、公共機関の情報コーナーに案内文を設置するなどして参加者を募っている。 初回のテーマは「産業構造の変化がわれわれの意識構造に及ぼす影響について考える」、第二回目は「少子化・高齢化社会を言葉の独り歩きではなく可視化してみる」、第三回目は「アメリカの過去と現在を概観し、米国の大統領選挙を身近なものにしてみる」、第四回目は「國分功一郎氏の『暇と退屈の倫理学』から退屈の概念に迫る」、第五回目は「自由貿易協定とわれわれの暮らし」であった。 郵送によるアンケートを毎回実施しているが、受講後の意識の変化が多くの受講生に見られる。それは図書館の利用、新聞の読み方、学習意欲の目覚め、消費行動の変化等であり、「参加者は意識的に社会のことをわかるようになる努力をはじめた」といえよう。今後の課題は、筆者の単独講義から双方向学習へと移行することであり、講座参加者の学習成果の発表の機会を増やし、知の循環型の学びのひろばになるよう工夫していくことである。 br> |
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参考文献 ・アンソニー・ギディンズ著 秋吉美都・安藤太郎・筒井淳也訳『モダニティと自己アイデンティティ:後期近代における自己と社会』ハーベスト社、2005 |
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