生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月29日
 
 

看護師の生涯学習 (かんごしのしょうがいがくしゅう)

lifelong learning for nurses
キーワード : 看護師、生涯学習、卒後教育、研修
近藤裕子(こんどうひろこ)
1.看護師の生涯学習
   
 
 
 
  【定義】
 看護師が、看護の対象となる人々に質の高い看護を提供するためには、国民の健康生活のニーズに柔軟に対応し、看護サービスを提供できる能力を開発・発展させていくことが重要である。そのために専門職とて生涯にわたって学習をしつづけることである。
【意義】
 看護師の生涯学習の目的は、新たな専門的知識・技術を修得・蓄積し、それを創造的に応用する知力の開発過程を支援することにより、看護の質の向上に貢献することである。
 今日、人々は健康に価値をおき、健康の重要性を認識している。医療や看護に対しても、インホームドコンセント、人生の質(QOL)、医療倫理、アドボカシー(権利の擁護)などが求められている。看護はこのような社会的変化、特に人間を尊重する姿勢への変革に柔軟に対応し、人々の健康生活や、健康文化の創成に対するニーズを充足する、質の高いケアの提供が必要となっている。専門的な知識と質の高い看護技術、人間を尊重する態度などを備えた能力をもつ看護師として成長するには、免許取得以降も多様な学習を多様な視点でもって継続して学習することが重要である。
【現状】
 現在実施されている教育は、卒後教育と継続教育に大別できる。卒後教育は、平成4(1992)年に「看護婦等の人材確保の促進に関する法律」が制定され、質の高い看護職を育成するには大学教育が望ましいとの考えから、看護系大学の設置が急ピッチで行われた。1990年代初めに11校であった大学が平成18(2006)年には144校にまで増加した。それに伴い大学院も増加し、卒後教育は充実の方向にある。さらに専修学校卒業生が大学に編入学できる制度や、大学院受験資格認定制度が設置された。大学院では大学院設置基準第14条に定める教育方法の特例を導入する大学院が増加し、大学院へのアクセスも可能になっている。これは社会人入学の枠が拡大し、より開かれた大学や大学院の時代がきたことを示している。このことは社会人が離職することなく、仕事を継続しながら学べることを意味している。
 他方、看護職能団体である日本看護協会の平成18(2006)年度の教育研修をながめると、13分野111コースが計画されている。年々研修の分野やコースは充実してきている。各県看護協会においても、年間多様な研修が計画・実施されており、一応研修は体系化されているように見える。しかし、日本看護協会と各県看護協会において連動している研修は、認定看護管理者研修だけであり、研修システムが組織化・体系化するにはまだ時間を要する状況である。
 看護師の生涯学習の一部は、各施設独自の方法で行われ、組織化・体系化も特に基準は設けられていない。施設内・外、組織化、系統化を問わなければ、多様な学習機会が開かれている。学習者においては、主体的に情報を収集し、自らに必要とする学習機会を選択し、アクセスできるようになっている。従って多くの情報の中で、何を選択するかは、その人自身の情報分析と処理能力にかかっているといえるだろう。
 看護師の生涯学習は、看護職に社会が何をもとめているか、何を行うことが重要か、その能力を付けるにはどのような研修が必要なのかを常に洞察しつつ、卒後教育、継続教育を包含した生涯学習システムを構築することが必要である。それと共に、生涯学習の評価をどのように行うかについても、早期に検討しなければならない主要課題といえよう。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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