生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月6日
 
 

高齢期の理解と学習 (こうれいきのりかいとがくしゅう)

comprehension and learning for senior age
キーワード : 自立、社会参加、自己実現、能力再開発、エ−ジレス
宮崎冴子(みやざきさえこ)
1.高齢学習者の自己実現
   
 
 
 
  【定義】
 国連人口問題研究所では65歳以上を高齢者と定義し、75歳以上を後期高齢者と呼んでいる。英語では75歳までをヤング・オールド、75歳からはオールド・オールド、85歳以上の超高齢期はオールディスト・オールドをあてはめている。
【説明】
 我が国では、生活水準の向上や医療技術の進歩による平均寿命の延伸と出生率低下により急速に高齢化が進展しており、平成18(2006)年で65歳以上の高齢者は全人口の20.8%を占めている。高齢者率7%は高齢化社会、14%以上で高齢社会、22%以上では超高齢社会といわれる。7%から14%への移行年数はフランスは115年、スウェーデンは85年、イギリスは45年、日本は24年である。日本の場合は昭和45(1970)年7%から平成6(1994)年14.0%へ、2015年には26.9%、2055年には40.5%に達すると予想されている。平均寿命は昭和31(1956)年で男性50.06歳、女性53.96歳であったが、平成17(2005)年には男性78.56歳、女性85.52歳となり、世界一の長寿国になっている。
 労働力人口の年齢別構成も高齢者層が増加している。体力も充分で働くことに意欲的な高齢労働者は、「企業で取得した知識や技術・技能、社内の様子に熟知している、人間関係が確立している」等、企業にとり大きなメリットがあるので、事業主との意識のギャップを調整しながら、職業能力再開発、人事管理・労働力配置の再構築、作業環境改善等を図る必要がある。また、年齢に関係なく能力に応じて働く「エージレス社会」をめざして継続雇用制度も実施されているが、高齢期の健康状態や資産に個人差があるので、多様な条件整備が必要である。
 また、定年退職した高齢者が地域社会で生涯学習を新たに始めたり、現役の頃からの活動を継続し発展させている場合もある。学習する動機として「趣味を豊かにする、健康体力づくり、教養を高める、人生を有意義に過ごす」等が挙げられる。国連が1999年に「国際高齢者年」として、高齢者5原則「自立、参加、ケア、自己実現、尊厳」を掲げたように、本人の尊厳やケアを確保しながら、元気に地域社会に参加し、安全に心豊かに過ごすことは社会全体にとっても有益である。
【課題】
 現役時代から生涯学習や社会参加をしてきた男性は、退職後も活発に活動している人が多い。退職後に活動を始めた男性も、数年経てば活動内容や頻度に変わりはなく、両群に大きな違いはみられない。女性は退職前から何かの趣味を持ち、退職後も継続している人が多い。趣味も長年続けると教えられるほどになり、学習からボランティア活動に発展させる人も多い。その活動が、また新たな活動を増やしていくことに繋がっている。
 一方で、生涯学習や社会活動に参加しない人の中には、「きっかけがつかめない、費用があまりかからないで自由に参加できるもの、自分の培った知識や技術が活かせるもの」等、他者からの誘いを待っている人や相談するところが分からないという高齢者もいるので、情報・機会提供や仲間づくり等のコーディネーターやアドバイザーの養成も課題である。今後の超高齢社会の進展を考えると、高齢者自身が人生の再設計をして、「保護される」という意識から、地域社会の活性化の原動力へと発想転換し、次代を担う若い世代に伝統文化や教育の継承をしていく気概が求められる。
 
 
 
  参考文献
・宮崎冴子著『21世紀の生涯学習-生涯発達と自立-』理工図書、2006年
 
 
 
 
   



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