登録/更新年月日:2009(平成21)年6月21日 |
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今回事例として取りあげるのは、ロンドンの成人教育専門機関として名高いシティ・リット(City Lit)で実施されている「勉学への復帰」(Return to Study)である。 シティ・リットでは、大学等高等教育機関(以下、大学等とする)への入学のためのフレッシュ・ホライズンズ(Fresh Horizons)と称される準備コース群(access courses)が設けられている。「勉学への復帰」は、その中での導入コース(Introductory courses)として位置付けられている。1年制課程と夏期講習があるものの、今回は2007年3月に筆者が参与観察の機会をいただいた1年制課程の方を中心に紹介する。 「勉学への復帰」1年制課程は、週1回(9月〜翌年5月・30週)の昼間課程である。学習内容は、普通・一般教育科目と学習スキルである。そこでは、少人数授業と個別指導により、討議形式や講師の問いかけによって在学者を支援・展開する方式が採用されている。時間管理・文献活用法・まとめ方などの基本的な学習スキル(study skills)、特に「ノートの取り方」を身に付けていくことには力を入れて取り組まれている。すなわち、この週1回という限られた時間の取り組みにおいては、まず学び方を学ぶことが何よりも重要となっている。というのも、学び方が身に付いてはじめて、それから先の学習が可能になると認識されているからである。 在学生が目指す到達度は、16歳時点での標準的な水準であるNQF(National Qualifications Framework, 全国共通資格枠組み、ただし本文執筆時にはQCF(Qualifications and Credit Framework, 資格・単位枠組み)へと移行中))における水準2(level 2)である。「勉学への復帰」は、ロンドン地域オープン・カレッジ・ネットワーク(Open College Network - London Region (OCNLR))が、NQF水準2と認証している。とはいえ、筆者訪問時の「勉学への復帰」の授業では、GCSE(General Certificates of Secondary Education, 中等教育一般証書)の取得を強く奨励していた。たしかに「勉学への復帰」の修了証明だけでは、社会一般での通用度が十分とは実は言い難い。「勉学への復帰」担当の責任講師も、「勉学への復帰」修了はGCSEと同水準であるものの、全国的な認知度に違いがあると筆者に説明していた。以上の状況の下、シティ・リットでは、英語と数学のGCSE課程を上記フレッシュ・ホライズンの取り組みの一環として昼夜双方で開講している。 なお、他の教育機関における関連する取り組みの検討は、今後の課題となる。その際、多くの場合財政的基盤がシティ・リットよりも弱いと想定できるので、その点にも十分留意することが必要となろう。 br> |
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参考文献 ・柳田雅明「イギリスにおける成人学習公共管理システムの転換: イングランドでの公費支出政策とその現場対応を中心に」『成人学習施策に見る公共管理システムに関する調査研究書 研究成果報告書』(大桃敏行 研究代表者)、東北大学大学院教育学研究科、2007年. ・柳田雅明「イギリスにおける成人に対する補償学習機会の検討:シティ・リット Return to Study を事例に」『日本生涯教育学会論集』29、2008年. ・シティ・リット・インターネットサイト、http://www.citylit.ac.uk/ |
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