生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月4日
 
 

大学生のキャリア教育 (だいがくせいのきゃりあきょういく)

career education for students
キーワード : 進路選択、就職支援、キャリア形成、能力開発、若者・自立挑戦プラン
宮崎冴子(みやざきさえこ)
1.キャリア教育の課題と展開
   
 
 
 
  【定義】
 1960年代の急激な社会構造の変化はあらゆる側面に課題を投げかけ、職業教育や進路指導の充実を急務としていた。米国では「キャリア教育」という教育理念を打ち出し、全米規模の教育改革を展開した。1971年に、教育局長官マーランドが知的教科と職業的教科の乖離とキャリア教育の必要性を訴えて、「今日から職業教育をVocational Educationではなく、Career Educationと呼ぼう。すべての教育はキャリア教育であるべき」と提案した。
 1975年、当時の担当課長ホイトが「キャリアとは生涯を通じて行う仕事の全体」“Career is the totality of work one does in his or her lifetime”(1975年)と定義し、「仕事には職業・職歴ばかりでなくボランティア、社会的な活動歴も含む」と明記し、これが連邦教育局の公式見解とされた。この定義は我が国の文部省「進路指導の手引き」に導入された。
【説明】
 近年、我が国ではニート(無業者)やフリーター、早期離職者が増加している。フリーターが職業生活で困っている点は、「仕事が自分と合わない」「人間関係がよくない」「キャリア形成の見込みがない」「能力・適性が分からない」等という。こうした状況に鑑み、政府主導でキャリア教育への取り組みが始まっている。平成15(2003)年に文部科学大臣はじめ関係閣僚による「若者自立・挑戦プラン」、全閣僚による「青少年育成施策大綱」が策定され、若者の自立と就業支援のためのキャリア形成・就職支援、労働市場の整備、能力向上、就業機会の創出等が議論された。平成16(2004)年にキャリア教育の推進に関する総合的調査研究者会議が「キャリアとは端的に児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てる教育」とし、学校のすべての教育活動を通じて推進することを提言した。
 こうした状況に鑑みて、大学教育におけるキャリア教育の導入が全国的な流れになっており、キャリア形成・能力開発への支援という観点からも重要視されている。学生自身が高校までの成績偏重の進路指導や受け身の姿勢ではなく、入学の早い時期から「生き方を考えた進路選択」「主体的な能力開発」へと発想転換することが必要である。そして、「自分で考え、自分で進路選択する」という当事者意識を持ち、行動することが大切である。在学中に「ありたい自分」「なりたい自分」に向かってキャリア形成・能力開発すれば、職業観・勤労観が醸成されるし、早期の進路決定にも繋がる。また、就職しても自立した社員として能力を発揮できるし、フリーターやニート、早期離職の防止に繋がるからである。
【課題】
 大学教育の目標は、学生がキャリア形成・能力開発をして、卒業後に「自立した社会人」として国を創り、国際社会で期していく力をつけることである。大学生へのキャリア教育を「生涯にわたる生き方教育」として振興するためには、@キャリア教育の概念に関する学内の共通理解、Aキャリア教育の教育的意義、Bカリキュラムの中での位置づけ、Cキャリア支援センター等との連携、Dキャリア教育のアセスメント、E学生自身のニーズに合うキャリア形成・能力開発等について、さらなる組織的・全学的な取り組みと社会的な基盤整備が課題である。
 
 
 
  参考文献
・仙崎武・池場望・宮崎冴子著『新訂・21世紀のキャリア開発』文化書房博文社、2005年
・宮崎冴子著『21世紀の生涯学習-生涯発達と自立-』理工図書、2006年
・宮崎冴子著『若者のためのキャリアプランニング-すばらしい未来を拓くために-』(社)雇用問題研究会、2006年
・宮崎冴子著『キャリア教育-理論と実践・評価-』(社)雇用問題研究会、2007年
・宮崎冴子著『キャリア形成・能力開発-「生きる力」をはぐくむために-』文化書房博文社、2008年
 
 
 
 
   



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