登録/更新年月日:2008(平成20)年12月4日 |
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【老年大学の展開】 老年大学の設立が、中国における高齢者教育事業の始まりだといわれる。1983年、山東省に老年大学が設置されて以後、老年大学はまたたく間に広がり、2002年には全国19,300校、在校生は180万人に達している。老年大学は、市から区、街道にまで広がり、一部の経済の発達した農村では県から鎮、クまで普及している。 【老年大学の事例ー天津市老年人大学ー】 (1)天津市老年人大学の概要 天津市は中国の中でも高齢化の先進地であり、高齢者教育の体制が整備された地域の一つでもある。その天津市の高齢者教育の出発点となったのが、1985年の天津市老年人大学の設置であった。天津市老年人大学の学生数は, 設立当初は4専攻、552名であった。しかし、2006年度には114専攻267クラス、8155名となっており、 現在、「大規模」、「多専攻」、そして「高水準」の総合的な老年大学へと成長している。広大な敷地の中には、運動場、ホール、パソコンルーム、料理や園芸実習のスペース、ピアノや剣道やダンスの練習室、音楽や書道等の自習室、そして教室も50室ある等、充実した学習環境が整備されている。 学習システムは以下のとおりである。天津市老年人大学の学習内容は、専門科目と一般教養科目とに分かれている。 まず専門科目は、「文学・歴史・外国語」、「書道」、「中国画」、「家政」、「身体健康」、「中医保健」、「ダンス演劇」、「音楽」、「コンピューター」の9部門からなる。学習年限の多くは、1専攻1年もしくは2年である。ただ、多くの学生は、修了後も大学を卒業せずに、同じ専攻の上級レベルに進学するか、他の専攻で学び続けている。次に一般教養科目は、毎週金曜日の午前中に開講されている。内容としては、幹部や専門家、学者による、時事や国の政策、思想道徳、老年保健、芸術鑑賞等に関する講義が行われている。 この他、学生の「第二教室活動(放課後の自主的な学習活動)」や「社団(クラブ)」も盛んである。「社団」には、合唱団やダンスチーム、民楽チーム、京劇チーム等、様々なものがあり、大学側は、これらの「社団」をあらゆる面から支援している。こうした活動は、天津市老年人大学で学ぶ学生に対して、学習意欲の喚起、コミュニケーションの促進、学生の才能の披露、大学生活の充実等、様々な面で重要な役割を果たしている。 (2)学生の学習満足度 滋賀大学生涯学習教育研究センターが、天津市老年人大学生780名を対象に行った調査結果によれば、高齢者は非常に意欲的に学習に取り組んでおり、そして老年人大学での学習には、91.7%の学生が「満足している」と回答していた。また、学習年数も「5年以上」学習を継続している高齢者の率がもっとも高くなっていた。老年大学での学習は、高齢者にとって生きがいの一つとなっている。 br> |
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参考文献 ・神部純一「中国における高齢者の学習と生きがいに関する研究−天津市老年人大学を事例として−」日本生涯教育学会編『法改正をめぐる生涯学習の新たな基盤整備(日本生涯教育学会年報第29号)』、2008年、pp.175-190。 ・「開拓革新する天津市老年人大学」(訳・注 張艶)『滋賀大学生涯学習教育研究センター年報2006』滋賀大学生涯学習教育研究センター、2007年、 pp.21-31。 |
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