生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

自己管理的学習 (じこかんりてきがくしゅう)

self-directed learning
キーワード : 個人学習の方法、インフォーマルエデュケーション、ノンフォーマルエデュケーション、成人学習論、ペタゴジーとアンドラゴジー
西林一江(にしばやしかずえ)
1.自己管理的学習
   
 
 
 
  【定義】
 自己管理的学習(Self-Directed Learning)とは、学習者が学習目的を認識し、学習者自身が日々の学習の計画や意志決定(何をいかに学び、どこで支援を得るか等)やコントロールの第一義的責任をもつ学習である。この学習は、個人が自己を他者から孤立して学習を進めるのではなく、他者と相互作用しつつ、多数の支援のもとにあらゆる学習資源や学習技能を利用しながら行われる。そして、相互学習や集団学習、単位取得が可能なプログラムや単位に無関係の成人学習など、学習者の生活全般のなかで意図的に行われている学習である。
 これに関連した学習として偶発的な学習や不意の学習がある。この学習はありとあらゆる不測の出来事での学習であり、学習者の計画の外で偶然に起こる。この偶発的な学習や不意の学習はより大きな自己管理的学習に結びつくといった点で自己管理的学習と絡み合わされている。
 自己管理的学習に対立する学習は、専門家によって計画され管理された学習であり、教師管理的学習である。学習のコントロールのスペクトルの範囲は、0パーセントから100パーセントに及ぶが、学習計画の各段階、各々の学習者の状況によってその割合は異なる。学習者が自己管理的学習の一環として集団学習に入ったり、専門家の助言を求めたりした場合、その学習の大部分は学習者自身が計画や意志決定したものであるから、自己管理的学習となる。                              
【説明・動向】             
 1960年代から展開された自己管理的学習(Self-Directed Learning)の研究に携わってきた研究者としては、タフ(Tough,A.)やノールズ(Knowles,M.S.)やググリエルミノ(Guglielmino,L.M.)、ブルックフィールド(Brookfield,S.)、スペアとモッカ(Spear,E. and Mocker,W.)、ブロケットとヒームストラ(Brockett,R.G.& Hiemstra,R.)、キャンディ(Candy,P.C.)、等が著名である。我が国では、1982年から赤木恒夫、池田秀男、後田逸馬、岡田龍樹、岡田正彦、岡崎眸、葛原生子、小池源吾、佐々木正治、前平泰志、三浦清一郎、宮脇陽三、三輪建二、安原一樹ら(50音順)によってこの言葉が引用され、特に広島大学教育学部社会教育学研究室のメンバーが中心となって研究がすすめられてきた。 
 Self-Directed Learningに類似する他の用語として、Self-Instruction、Self-Education、Self-Guided Learning、Self-Teaching、Independent-Learning、Self-Study、Individual Study、Autonomous Learning、Self-Planned Learningがあり、我が国の研究者間でもこの訳語として「自己管理的学習」、「自己主導的学習」、「自己決定学習」、「自己決定型学習」「自己学習」、「自律的学習」、「自己教育」などが使用されており、訳語の統一はされておらず、論者によって趣意は微妙に異なっている。
 
 
 
  参考文献
・『生涯学習事典』東京書籍、平成元(1990)年、36-37頁、(池田秀男、「自己管理的学習」)
・西林一江「アレン・タフの自己管理的学習論」『安田女子大学大学院文学研究科紀要 第4集』、第4号、平成10(1999)年
 
 
 
 
   



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