登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【定義】 『教育大辞典』(上海教育出版社、1991年)によると、成人高等教育とは、「規定された入学水準に合致している在職あるいは非在職の成人を対象として実施される高等教育レベルの教育」と定義づけられている。この成人高等教育と伝統的な普通高等教育(普通大学)との二つの柱が、お互いに補完しながら高等教育体系を構成しているところに中国の特徴がある。 【説明】 中国の成人高等教育の特長は、学習形態や教育プログラム、設置形態などが多種多様で柔軟な点にある。学習形態には、職場から離れてフルタイムで学習する「全脱産」、仕事をしながらパートタイムで学ぶ「半脱産」、仕事の余暇や夜間を利用して学ぶ「業余」がある。こうした教育を提供する代表的な機関としては、以下の成人高等教育機関があげられる。 ア.職工大学(職工業余大学:企業労働者を対象) イ.広播電視大学(ラジオ・テレビ大学) ウ.農民大学(農業の専門家を養成) エ.管理幹部学院(幹部の再教育) オ.教育学院(教員の再教育) カ.独立通信学院(独立した通信教育機関) キ.普通大学に設置されている通信部・夜間大学・幹部専修科 中国の学歴には、2〜3年制の専科と4年制の本科の両段階があり、その学歴は高等教育学歴として認められている。上記の成人高等教育機関は、文化大革命終結から1980年代末までに整備がすすめられ、主に文革で抑圧されてきた人びとに対する学歴教育を担うかたちで発展してきた。2003年度現在、558校の成人高等教育機関に、559万人もの学生が在籍している。これらの成人高等教育機関をみると、教育方法も中国の広大な国土を反映して、通信・遠隔教育を用いた機関が多いことに気づくだろう。とくに最近では、インターネットを利用した遠隔教育機関であるネット教育学院も出現し、2003年には67校の重点大学にネット教育学院が設置されている。 この他、高等教育独学試験制度も成人高等教育の範疇に入る。1985年から本格的に導入されたこの制度は、試験によって独学の成果を認め、規定されたすべての試験に合格すれば、その学歴が国家によって承認され、高等教育機関の卒業生と同等の賃金・待遇を得ることができる。 さらに、近年の急速な経済発展による人材育成の必要性や普通高等教育の普及・整備と相まって、成人高等教育は学歴教育だけでなく、学歴を提供しない非学歴教育も重視されるようになってきた。具体的には、専門証書教育、在職職務訓練、大学後継続教育などの進展が著しい。このように学歴教育と非学歴教育の両方を担当する成人高等教育は、中国の高等教育体制において重要な役割を果たしている。 しかし、その一方で普通高等教育との学歴の格差を問題視する声や、成人高等教育は非学歴教育に専念すべきであるとの指摘があるのも事実である。中国の生涯教育体制の構築に向けて、その中核的な役割が期待されている成人教育、とりわけ成人高等教育のあり方が問われている。 br> |
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参考文献 ・教育大辞典編集委員会編『教育大辞典』第3巻、上海教育出版社、1991年 ・中国教育年鑑編集部編『中国教育年鑑(2004)』、人民教育出版社、2004年 ・南部広孝「文革後中国の高等教育における独学試験制度の役割」比較教育学研究、第20号、1994年 ・熊谷愼之輔「中国における成人高等教育の進展−広播電視大学(ラジオ・テレビ大学)の改革に着目して−」日本生涯教育学会年報、第18号、1997年 ・熊谷愼之輔「中国広播電視大学の開放教育をめぐる論点」日本生涯教育学会年報、第20号、1999年 |
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