生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2015(平成27)年11月24日
 
 

NIE(教育に新聞を)でまちづくり (えぬあいいー(きょういくにしんぶんを)でまちづくり)

キーワード : 町づくり、地域活性化、NIE(教育に新聞を)、市民性(シティズンシップ)
山田明(やまだあきら)
1.NIE(教育に新聞を)で町づくり
   
 
 
 
  【説明】
<NIE(教育に新聞を)で町づくり>
 町づくりには、地域住民が地域活性化の視点で責任ある市民として主体的に参加することが望まれる。青少年には町づくりの担い手になることが期待され、責任ある市民としての資質及び能力である市民性(シティズンシップ、以下省略)の涵養が求められる。市民性の体得に資する教育方法にNIE(教育に新聞を、以下NIE)があり、地域活性化を目的とした町づくりにNIEを活用したプロジェクト(高校生発!地域活性化新聞プロジェクト、以下「高校生新聞」)にその事例を見ることができる。NIEは1930年代のアメリカが起源とされ、社会性のある青少年の育成を目指してきた。新聞を活用し、読む・聞く・書くという創造的な活動を通して知的好奇心や興味・関心を持ち、教科学習へフィードバックすることで各教科の知識が生きたものになる。課題発見・解決能力・情報リテラシー(収集力、批判力、活用力)・思考力・判断力・表現力などの市民性の涵養に効果的である。

<期待される市民性の涵養>
 現代の青少年は、概して人と交わる経験が不足しており、他者と協働することが必要とされる社会において課題がある。他者理解が困難になれば、学校や地域社会で生きていくことや自己の確立も困難になる。この他者理解のために、自己理解・サービスの精神・人間関係を創造するコミュニケーション能力の涵養が必要である。また市民性とは、自己肯定感を伴った積極的な資質及び能力のことである。「高校生新聞」は、身近な地域社会における町づくりという社会貢献を通して自己肯定感を高める活動でもある。学習効果が顕著な資質項目として、地域社会への主体的参加、情報収集能力、活動中の困難体験に出会ったときの工夫、目標を達成するための見通し、行動の結果を理解・分析する能力等がある。学習効果に時間を要する資質項目として、集団をリードする力や決断する力などのリーダーシップ、説明や発表する表現力等である。これらは短期間で涵養することが難しく経験を積むことで徐々に効果が期待できる。  

【課題】 「高校生新聞」の課題
 次の二点が挙げられる。一つ目は、学校での学びと社会貢献活動の関連、いわゆる教科のカリキュラムが地域社会のニーズと密接であったか、課題解決学習として十分に効果的であったかという活動の質の充実である。二つ目は、評価である。「高校生新聞」には、学習活動の目的に沿った学習効果が期待される。この評価に工夫がなされたのかという課題である。評価は「高校生新聞」の一般化にむけても重要であり、例えば学校教育及び社会教育における市民性涵養のプログラミングや普及にも関わることになる。

【事例】
「高校生新聞」は、平成17(2005)年から平成24(2012)年の8年間にわたり、福岡県北九州市在住の高校生が町づくり新聞に責任ある市民として参加し地域住民と一緒に活動したものである。高校生が、きちゃり〜新聞(八幡東区)、若松今昔新聞(若松区)、門司新聞(門司区)、とばた新聞(戸畑区)の四紙の作成を通し、若い視点で地域活性化の処方箋を提案した。
 
 
 
  参考文献
・山田明「NIE(教育に新聞を)で町づくり」『日本生涯教育学会論集36』2015
・山田明『改訂NIE(教育に新聞を)で町づくり』鳥影社、2014
 
 
 
 
   



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