登録/更新年月日:2016(平成28)年2月29日 |
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集落と学習者の孤立は,学習者を面(地縁)や塊(集団)で捉えることが困難になったことを証左する。こうした状況は,ソーシャル・キャピタル(人々の信頼関係,規範,つきあい・交流)の構築,学習の成果を活用した社会貢献活動,コミュニティ振興等の観点からいえば好ましいことではない。 孤立を抑止する方途のひとつとして,学習者が自由意思で繋がる「学習者ネットワーク」が考えられる。これが構築されると,時間や場所が学習の障壁とならず,学習者は好きな時間に気を許せる相手と繋がることが可能となる。ただ,個人をベースとするネットワークでは「集団」や「集合」による相互学習を特質としてきた社会教育の意義が矮小化される,との懸念も生じよう。しかし繫がった者同士は情報の交流を通して人間関係を濃密にし,ネットワークを介して多様な情報や考え方,学習資源等との接触が可能になり,さらに知ろう・学ぼうとする内発的で自発的な学習意欲も触発される。 このように,学習ネットワークが相互学習を助長する装置となることから,これを構築することの意義は大きい。これを可能にする情報メディアIT(Information Technology)・ICT(Information and Communication Technology)の社会環境が整いつつある。 昭和20年代から30年代前半,若者は青年団,女性は婦人会などの日常生活圏の地縁集団に参加して課題解決学習に取り組んだ。その後の高度経済成長によって社会教育・コミュニティ施設の整備が進み,人々は施設に足を運ぶことで,昭和50年代以降の情報化時代に入るとメディアを活用することで,学習ニーズが叶えられるようになった。すなわち,学習機会へのアクセスは「集団」→「施設」→「メディア」と,厳密にいうと「集団」から「集団と施設」へ,そして「集団と施設とメディア」へと推移してきた。そしていま,スマホやタブレットを駆使して欲しい情報を得て学習することができる。しかも,モバイルだから電車やバスで移動中でも歩行中でも可能となった。長いこと社会教育関係者は「いつでも,どこでも」学習できる社会・学習環境を追求してきたが,その願いはメディアによって実現された。いまや学習の機会は「スマホ講座」,講師は「YOUTUBE先生」,学習者は「スマホっ子」の時代になった。 さらに,Googleで世界文化遺産とその所在地を調べ,現地訪問のためにと文字,映像,音声で語学・会話を習得する。QR(Quick Response)を駆使して,紙媒体に印刷されるコードにスマホをかざして学習情報や機会にもアクセスできる。IT企業も積極的に,資格取得に係るプログラムをはじめ多彩な教育・学習支援サービスを開発し,モバイル向けサービスを展開している。加えてFacebook,Twitter,LINE,Mixiなど,人と人との繋がりをサポートするSNS(social networking service)の広がりも著しい。IT・ICT,SNSは社会教育のインフラとなって,学習のスタイルや社会教育の形態を変え,双方向によって孤立した学習者を相互学習へと誘うツールとなっている。 学習者ネットワークはおそらく今後,市民や学習者の間で自由気ままに拡がっていくに違いない。人々の学習を支援する責務を負う社会教育行政には,孤立する学習者の増加現象を「個別化の時代」の観点からとらえなおすとともに,常にメディアの動向を見極めながら,これまでに構築してきた通信教育や個人学習支援のノウハウを総動員して,学習者の孤立を抑止して社会教育の振興を図っていく必要があろう。 br> |
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参考文献 |
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